第5話 真実の拡散

「記者にデータをリークするわ。」

香織が決断すると、涼介は驚きながらも頷いた。


「信頼できる記者なんているのか?」

「一人、心当たりがあるわ。」香織はスマートフォンを取り出し、電話帳をスクロールする。


「待て、誰だよ?」涼介が少し警戒するように訊く。

「吉井茜――東京の大手新聞社の記者よ。数年前に一度、別の事件で協力したことがある。彼女なら真実を歪めずに伝えてくれるはず。」


「東京か……ちょっと遠いな。」涼介が不安げに呟く。

「今は距離よりも確実さが大事よ。」香織はスマホを手に取り、画面を見つめながら深呼吸した。


数回のコールの後、受話器の向こうから明るい女性の声が聞こえてきた。

「はい、吉井です。」


「私よ、香織。」

「三田村香織?久しぶりね!どうしたの、こんな時間に?」


「お願い、時間がないの。今すぐ話したいことがあるわ。重要な証拠を掴んだの。」


吉井の声が急に真剣になる。「どういうこと?場所は?」

「今、門司港よ。でも移動しながら詳細を送るわ。あなたにだけ、これを託したい。」


「わかった。信頼してもらえるなら、私も全力で応える。」


香織は電話を切ると、涼介に向き直った。「吉井が受けてくれる。私たちはデータを東京に届ける必要があるわ。」


「東京?この状況で大丈夫か?」涼介が心配そうに眉をひそめる。

「安全な方法を考えないとね。」香織の目は鋭かった。


香織と涼介は人気のないバスターミナルの片隅で、東京行きの深夜便バスを待っていた。暗闇に包まれたターミナルには、古いベンチと自販機の光だけが頼りだった。


「バスで移動なんて、追っ手が気づいたら厄介だな。」涼介が低く呟く。

「そのためにわざと乗り場を変えたのよ。別のルートも考えてる。」香織は冷静に答えた。


涼介が少し笑みを浮かべる。「お前、どこまで用意周到なんだよ。」

「ここまで来たら慎重にならざるを得ないわ。」


その時、遠くから黒い車のヘッドライトがバスターミナルを照らした。香織と涼介は息を飲む。


「まさか、もう見つかったのか?」涼介が焦ったように立ち上がる。

「落ち着いて!」香織はバッグを抱え、状況を冷静に観察する。


車が停まると、スーツ姿の男がゆっくりと降りてきた。見覚えのある顔――西日本建設で対応してきた坂口だった。


「なんでここに……?」涼介が小声で言う。


坂口は香織たちを見つけると、近づいてくる。「君たち、やはりここにいたか。」


「何の用?」香織はバッグを抱えたまま警戒する。


「余計なことに首を突っ込むなと警告したはずだ。」坂口の目は冷たい。だが、その奥には何かためらいが感じられた。

「警告は聞かなかったことにするわ。」香織が一歩も引かない。


坂口はため息をつくと、低い声で言った。「今ならまだ間に合う。データを渡せば命は助かる。」


「冗談じゃない。」涼介が言葉を噛み締めた。「お前らが何を隠してるのか、全部世間にぶちまけるんだ。」


「その行動が君たち自身を危険にさらすことになる。」坂口の声にはわずかな哀れみすら感じられる。


「私たちは覚悟の上です。」香織が毅然と答えた。「真実を明らかにする。それが、山崎さんへのせめてもの報いだから。」


坂口はしばらく二人を見つめた後、ふと視線を外し、背を向ける。「……好きにしろ。ただし、次は助けない。」


黒い車が再び走り去る。涼介は緊張を吐き出すようにため息をついた。「何なんだよ、あいつ……。」

「きっと、彼も何かを知っている。でもそれを話す勇気がないのね。」香織はバッグを抱え直し、バスの到着を待った。


バスが静かに出発し、港町の街並みが徐々に遠ざかっていく。香織は席に座りながら、バッグを膝に抱え、窓の外を見つめた。


「やっと……少し安心したか?」涼介が隣で小声で尋ねる。

「まだよ。これからが本番。」香織の声は静かだが、決意に満ちていた。


「吉井って人、本当に信用できるのか?」

「彼女なら大丈夫。私が知る限り、真実を追い続ける数少ない記者よ。」


バスの車内は静まり返り、他の乗客たちは眠りに落ち始めていた。だが香織と涼介の目は冴えたままだ。


「このデータ、ちゃんと届くといいな。」涼介が呟く。

「届かせるわ。必ず。」香織は窓の外の夜空を見つめながら、遠くに浮かぶ星を見つめた。


読者選択肢


香織と涼介は吉井茜にデータを託すため、東京へ向かっています。しかし、坂口の警告と追っ手の動きが不気味に迫りつつあります。次の行動をどうするべきでしょうか?

1.吉井茜にデータを直接渡す前に、もう一度データを確認する

 - 信頼しているとはいえ、データの中身をきちんと整理し、罠や不自然な情報がないかを慎重に確認する。

2.吉井茜に早急にデータを渡し、世間に公開する準備を始める

 - 時間との勝負だと判断し、吉井に全てを託し、真実を広める行動を優先する。


応援コメントへの選択番号記載依頼


読者の皆様、いよいよ真実が明るみに出ようとしています!

香織と涼介が命を懸けて掴んだデータをどう扱うか――その選択が次の展開を決めます。あなたの推薦力が試される時です!


コメント欄に「1」または「2」の番号を書いてください!

締切:明日朝7時まで

香織たちの運命は、あなたの一票で大きく変わります!


読者メッセージ


いつも『港町事件簿』をお読みいただきありがとうございます!

いよいよ核心に近づきつつある物語ですが、彼らが真実を守り抜くためには、あなたの選択が必要です。


物語を動かすのは、あなたの一票です。次回もどうぞお楽しみに!

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