第32話、メイドフルオーダーメイド

「これを着てほしい」

 アレクがルリに言った。


「これは……」


 ルリの前には、トルソーのマネキンに着せられたクラシカルなメイド服。

 

「自分がで作った」


 耐刃耐化学兵器に強いハイパーケプラー製。

 ホワイトプリムと体の前部を守る白いエプロンは、”鋼鉄蜘蛛の糸”製でヘタな金属鎧より防御力が高い。 

 その上軽い。

 ルリの体に《《完全にフィット》するのはもちろん、格闘時の体の動きも考えられた裁縫がなされている。

 全てアレクのお手製だ。


 メイドゥ―ン王国の男性は女性にプロポーズするとき、のメイド服を贈る習慣がある。


「これを着て自分に一生奉仕して欲しい」


 という願いとともに送るのだ。


 それを見て感動しながら口を手で抑えるルリ。


「結婚してくれ」


 アレクがルリの目にひざまづいて指輪を出した。


「はい……はいっ」

 ルリがそっと左手を出した。


「ルリさんっ、必ず幸せにするっ」

「僕のメイドさんっ」

 アレクが左手の薬指に指輪をつけた。


 パアアアアアアア


 指輪についた左手の甲にメイド紋が浮かび上がる。

 さらにその何倍もの契約紋が輝く。

 契約は成された。


 位階は、王子プリンス

 

 ルリはアレクの専属メイドになった。


「ルリッ」

 アレクが痛いくらいにルリを抱き締める。


「私の、私だけのご主人様っ」


 ルリの瞳に一粒の涙が光った。



「うおおおおおおおお」

「残念美人と呼ばれたルリが」

「めでたいっ」

「ギルドの名物、マッドメイドルリが」

「ついにや決めたわねえ」


 パチパチパチパチ


 周りにいた冒険者やギルドの職員が拍手した。


 ギルドの酒場での話である。




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