第7話、メイドメシマズ奉仕

 メイドだ、メイドだ~

 メイドになるのだ~

 白い~メイドの~ジャングル~に~


 私は、”メイドの穴唱歌”を口ずさんだ。

 ”月刊メイド”を街のブックスタンドで買う。

 秘密結社、”メイドの穴”が刊行しているメイドの専門誌である。

 表紙にホワイトプリムをつけた水着のお姉さんの写真。

 ペラペラとめくる。


 ”ルリ・フローレス・キザクラ”


 月別、メイド順位ランキング戦闘部門、”一位”に私の名前があった。

 ――ふふ、ドラゴンとゴブリンキングを討伐したら当然か


 さて、”メイドの穴”とは何なのか、少し説明しておこう。


 ”貴人の側にメイドあり”


 王侯貴族や、王宮、貴族の館の全てにメイドはいる。

 たしか、そのメイドたちを使い、国や社会にあ~んなことやこ~んなことをしてしまおうとして作られた秘密結社。


 それが秘密結社、”メイドの穴”であるはずだ。


 他にも色々やっているようだが細かいことは忘れた。

 勉強は苦手である。 


 ”メイド殺法”の使い手である紋付メイドの育成もここで行われる。

 私のメイド殺法は、師匠である、”メイドチョー”フローレスに教わった。


 ちなみに、私は、”オールワークスメイド”だ。


 メイド殺法さっぽうその2、”メイド掃除”(ルームメイド)

 メイド殺法さっぽうその8、”メイド洗濯”(ランドリーメイド)

 メイド殺法さっぽうその6、”メイド料理”(キッチンメイド)


 以上のメイド殺法さっぽうを使えるため、どのメイドにもなれる。

 さらに、外法である、メイド殺法さっぽうその25、”メイドメシマズ奉仕”も身に着けている。

 何もないところで転倒する訓練も受けた。


 ”ドジッコメイド”にも完璧に対応して見せようっ(キリッ)。


 一部のご主人様に絶大な人気ニーズがあるのだ。


 色々考えながら歩いていたら、ギルドの建物まで来た。

 ドラゴンとゴブリンキングで結構な賞金が出たので、まあ暇つぶしである。

 エリザベスにでも相手してもらおう。


「だから、仕事中だって」

「それと、お茶に誘うんだったら紅茶くらい用意しなさいよ」

 エリザベスは紅茶派である。


 バアンッ


 ギルドの扉が勢いよく開いた。


「ここに、メイドはいるかっっ」


 年若い女性の声。

 入口を振り向くと背の低い、”メイド”が大きな声を出していた。


 私も含めて、ギルド内の人間すべてが入口の女性を指差した。


「私以外でだああっ」

 入口のメイドが地団駄を踏んだ。

 一瞬、”メイド影隠れ(インシャドウ)”で姿を消そうかと思った。






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