第5話 枯れた花壇の約束
ユリは再び花壇の前に立ち、息を吸い込んだ。枯れかけた花々が静かに風に揺れている。色あせた花弁が地面に散らばり、生命の終わりを感じさせるその場所に、ユリは何かを感じ取っていた。
「最初はここから…だよね。」
ユリの呟きに、ジュノがゆっくりと彼女の隣に立つ。
「ここにする理由はなんだ?」
「一番目につく場所だからです。」
ユリは花壇を見つめながら言った。
「この庭園は、たぶん誰もが最初にここを見ると思うんです。だから、まずはこの花壇に元気を取り戻させて、全体の『最初の一歩』にしたいんです。」
ジュノは少し驚いた表情を浮かべた。
「面白い考えだ。」
「…笑わないんですね。」
「笑う理由がない。合理的だと思うが?」
その冷静すぎる返しに、ユリは少しムッとした表情を見せた。
「なんでそんなに素直じゃないんですか?」
「素直だと信頼されない。」
「そんなこと…」
「そんなことあるんだよ。人は、自信がありすぎる人間より、信用できないほど疑い深い人間の方が『本気だ』と感じる。」
ユリは呆れたようにジュノを見つめた。
「なるほど、嫌味に聞こえないあたり、さすがですね。」
ジュノはフッと笑ったが、それ以上は何も言わず、再び花壇に目を向けた。
「よし、やってみます。」
ユリは手袋をはめ、膝をついて花壇に手をつけ始めた。
「最初はこの枯れた花を全部取り除いて、土を耕さなきゃ。」
ジュノは彼女の横に立ちながら、腕を組んでじっと様子を見ている。
「…手伝わないんですか?」
「俺は監督だ。」
「監督って、そんな…!」
ユリは文句を言いながらも手を止めず、根気強く枯れた花を引き抜いていく。ジュノはその姿を無言で見つめていたが、やがてスーツの上着を脱ぎ、袖をまくり始めた。
「えっ?」
「文句を言われる前に手を貸すことにする。」
「…最初からそうしてください。」
ユリは少し笑いながらジュノを見た。スーツ姿のまま土に触れるジュノは、まるで不自然な存在だったが、意外に手際が良い。
「副会長って、こんなこともするんですね。」
「君に言われて気づいたが、俺は意外と『手を動かす』ことが嫌いじゃない。」
「だったら最初から一緒にやりましょうよ。」
ジュノはわずかに笑みを浮かべたが、それ以上は答えず、黙々と作業を進めた。
作業を始めて1時間。土の匂いと汗の気配に包まれながら、ユリは少し息をついた。
「ふぅ…思ったより大変ですね。」
「これくらいで音を上げるのか?」
「いや、そうじゃないです。むしろ楽しいかも。」
ジュノは驚いた顔を見せる。
「楽しい?」
「はい。枯れた花を取り除くと、次にどんな花を咲かせるのかって考えるじゃないですか。なんか未来を作ってる気がして。」
ジュノはその言葉を聞き、視線を庭園に向けた。
「未来を作る、か…」
「副会長にはそういう発想、ないんですか?」
「…今はないな。」
ユリは彼の返答に不思議そうな顔をした。
「どうしてですか?」
ジュノは少しの間、沈黙する。
「この庭園は俺にとって過去の象徴だ。」
「過去?」
「子供の頃、ここは俺にとっての楽園だった。だが、ある日すべてが終わった。」
ジュノの言葉は淡々としていたが、その声にはどこか切なさが滲んでいた。
「それでも、この庭園を再生したいんですよね?」
「そうだ。」
「じゃあ、過去にとらわれるのをやめませんか?」
ジュノはユリの言葉に視線を向ける。
「…簡単に言うな。」
「簡単じゃないから、やる価値があるんです。」
ユリの真っ直ぐな言葉に、ジュノは目を細めて彼女を見つめた。そして、少しだけ微笑む。
「君は、思った以上に厄介な人間だな。」
「厄介って…褒めてます?」
「さあな。」
二人の間に、穏やかな風が吹き抜けた。
選択肢
ユリが花壇に新しい花を植えるなら、どんな花にする? あなたの選択で庭園の未来が変わります!
1.色とりどりの花(カラフルなガーデン)
→ 明るく華やかな庭園を目指す展開。
2.白い花(静謐で美しい花壇)
→ 落ち着きと品格のある庭園にする展開。
3.青い花(特別な象徴の花)
→ 庭園に「特別な意味」を込めた花を植える展開。
応援コメントへの選択番号記載依頼
「ユリが最初に植える花はどんな花がいいと思いますか?次の展開はあなたの選択次第です!ぜひコメント欄に選択番号を記載してください。選択番号のみの記載も大歓迎です!〆切は明日7時までとなります。感想や応援コメントもお待ちしています!」
読者メッセージ
「最後までお読みいただきありがとうございます!ユリとジュノの小さな一歩が、枯れた庭園にどんな未来をもたらすのか――あなたの選んだ花がこの物語を彩ります!毎日21時に更新される『星降る庭園で君を待つ』、ぜひ次回もお楽しみに!コメント、お待ちしています!」
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