第274話 対決


 クーマは引くつもりが無いようだ。

 正直、やる前から勝負は決まっているようなものなんだが……そんな勝負にあえて挑むおとこは嫌いじゃない。ここはじっと見守ることにするか。


 ……もしかしたら『ヒトデになら勝てるだろ。この勝負もらったな』という情けない理由かもしれないが……いや、よそう。親友を疑うのは。


 ナッちゃんが本気を出すと周りの人間が発狂するかもしれん。忘れがちだがあの邪神たちは見ただけで正気度(SAN値)をゴリゴリ削ってくるのだ。ここは戦闘以外の勝負で決めて欲しいところ。


 ……ちなみにそんなナッちゃんの本体(?)を直視するどころか斬りつけても平気そうだったのが師匠だ。どうなっとんねん。勇者としての加護か、あるいは単なるバケモノか……。


「……それ言ったらアークさんも直視してますからね? 平気な顔してバトルしてましたからね?」


 じとーっとした目でツッコミを入れてくるラタトスクだった。失礼な。それじゃまるで俺が師匠バケモノ枠みたいじゃないか。


「へっ」


 なんかムカつく顔で鼻を鳴らされてしまった。どういうことだよ?


 まぁラタトスクの相手はあとにして。勝負内容は……『ゆるキャラ』の座を賭けて戦うのだから、人気投票でいいんじゃないか?


 というわけで。

 ここは第三者の意見を聞くべきだし、回復した村長と村娘さんを送り届けなきゃいけないので、もう一度村に向かうことにしたのだった。





「は、はぁ……人気投票ですかい?」


 村へ行き、まずは村長と村娘さんを引き渡し。その後に人気投票について伝えると訝しげな顔をされてしまった。よく考えなくてもそうだよな。


「まぁ、手空きの人間がいたら協力してくれないか?」


「へぇ、そういうことでしたら」


 よく分かっていなさそうだが、それでも五人の村人が協力してくれることになった。


「では! ボクの出番ですね!」


 集まった村人に札というか小さな看板というかネームプレートみたいなものを二つずつ渡していくラタトスク。札にはそれぞれ『クーマ』、『ナッちゃん』と書かれているので、いいと思った方の札を上げるのだろう。


 え? そんな札をわざわざ準備したの? 暇人というかアホというか変なところで頑張りすぎて肝心なときに手抜かりして失敗しそうというか。


「さらっと高火力で貶すの、やめてもらえませんかね!?」


 図星を突かれたせいかちょっと涙目のラタトスクだった。


『じゃあ、まずは俺が行くぜ!』


 自信満々に手を上げたクーマ。そして、


『あはーん』


 また、いつかのようにセクシーポーズを決めるのだった。


『うふーん』


 髪を掻き上げるような動作をしつつ、ウィンクするクーマ。

 いつぞやのように褐色美人になればまだ効果はあるのだろうが、見た目クマのぬいぐるみなので村人たちは頭に『?』マークを浮かべている。そりゃそうだ。


≪なっ!≫


 今度は私の番ね! みたいな声を上げたナッちゃんがポーズを取る。うふーん、あはーんと。

 もちろん外見はヒトデなのでまったくセクシーではない。


「あ」

「はぁ」

「えーっと」

「か、かわいいですね……」


 戸惑いつつもお世辞を言ってくれる村人さんだった。なんかすみません。


「さぁ! いよいよジャッジメント☆ターイム!」


 ノリノリで進行するラタトスクだった。そんなハイテンションなのお前さんだけなんだが、大丈夫? みんなついて行けてないぞ?


 もちろんこの世界の住人である村人は英語なんて理解できないのだが、流れを察したのか札を上げてくれた。


 うん、ぜーんぶ『ナッちゃん』だな。


『なぜだぁ!?』


 絶叫するクーマだった。見た目は可愛らしいクマのぬいぐるみだもんな。叫びたい気持ちもまぁ分かるかもしれない。


 村人さんたちはお互いの顔を見合ったあと、


「いえ、」

「だって、」

「この近くで『クマ』といったらブラッディベアですし」

「可愛いと思うのは」

「ちょっと無理ですね」


 あー、師匠や俺だと楽に討伐できるが、本来ならレンガ造りの建物を半壊させるほどの魔物だものな。可愛いと思えというのは無理な話か。


『なんてこった……』


 力なく地面に両手を突くクーマだった。どんまい。



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