第245話 ゴーレムカタパルト

 アイツら、まだ夕方だというのにもう寝ているらしい。そりゃ遅いわけだ。影のオッサンは真面目な男だから、騎士団も真面目に行軍してくると思ったのだろう。


「…………」


 もう寝込みを襲って王太子と騎士団長×2の首を取っちゃうかなーっと思った俺だが……それだと騎士団を撃退してのD.P.(ダンジョンポイント)がゲットできないよな。


 うーん、上の首を取ればそれで終わりだし、何とも平和的な解決方法だと思うんだが……それよりもD.P.を優先しているあたり、やっぱり思考が魔王化しているかもしれん。


「今さら今さら」


 やーれやれと肩をすくめられてしまった。ラタトスクに。なんだかこれもテンプレ化してきたな。


「それと、アークさんの言う『平和的な解決』もだいぶ物騒ですからね?」


 王子と騎士団長×2、合計三人の首で内乱(?)が丸く収まるんだから平和的じゃないか。ノーベルな平和賞をもらってもいいくらいだ。


「魔王」


 解せぬ。





 相手が寝入っているのに待っていてもしょうがない。いやこちらの油断を誘って夜襲を仕掛けてくる可能性もなきにしもあらずだが……あいつらだからなぁ。たぶん心配しなくてもいいだろ。


 それに、夜襲をするなら道を通らずに魔の森を抜けようとするはずだが、抜けられるはずがないものな。人は夜目が利かないが、魔物は利くのだ。ただでさえ一方的な戦いが虐殺に変わるだけ。こっちの手間が省けて万々歳だな。


 というわけで。寝ている連中を待っていてもしょうがないので平地へと戻ってきた俺だ。まぁ『平地』といっても露天風呂とか体育館並みにでかい建物とか冒険者たちが泊まっているゴーレムハウスとかあるのでそろそろ別の言い方を考えた方がいいかもしれない。


「――おや! アーク君、丁度いいところに!」


 俺の姿を見つけたシャルロットが元気いっぱいに手を振ってきた。その隣にはメイス、ミラ、そしてヒロイン・アリスの姿も。順調に仲が良くなっているようで何よりだな。


 いやまぁそれはいいんだが、問題は……シャルロットたちの後ろにバカでかいゴーレムが鎮座していることだ。この前クーマが魔改造されたときと同じくらいの大きさ。前世で言うと雑居ビルくらいの高さか。


 ……まさか、あのゴーレムを使って騎士団を踏みつぶそうと? ちょっとグロくないか?


「ん。ちがう」


 俺の心を読んだミラが首をふるふると横に振った。

 実際に見てみろ、とばかりにミラが片腕を上げた。その動きに呼応するかのようにゴーレムが動き、足元にあった岩を右手で掴む。ちなみにあんな岩もなかったはずなので、土魔法で作ったんだろうな。あるいはゴーレムを使って持ってきたか。


「――攻撃」


 ミラが指示を下すと、巨大ゴーレムが右腕を振りかぶり、手にした岩をぶん投げた。野球選手……いや、砲丸投げって感じか。


 しばらく山なりに飛翔し、重力に従い落下する岩。おっ、結構でかい音が。森を越えたあたりから。


 正直、岩を投げたところで直接の効果は薄い。城壁を壊すならともかく、人間相手だと滅多に当たらないし、当たったとしても爆発する訳ではないので岩の直撃範囲しか倒せないからだ。


 だが、空から岩が降ってくるのは恐怖だろう。しかも人が投げられないほど巨大な岩だ。大混乱に陥り逃げ出したとしてもおかしくはない。


 ミラ、結構えげつないこと考えるのな……。


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