或る⬛︎⬛︎の流離人
@Yuuhi_K
第0話 王都の流離人
晴れやかな真昼の王都。その清々しい風景と似合わずスラム街近くの街角ではゴロツキが一人の青年を囲んでいた。
「おいっ、お前ここら辺のやつじゃねえだろ。金目のものをよこしな!!さもないとどうなるかわかっているだろうな!?」
「おーおー。こんな真昼間からご機嫌なこった。嫌になっちゃうねえ。」
ゴロツキたちの脅しをまともに聞きもせず青年はそういった。当たり前のようにゴロツキは機嫌を悪くしその青年に武器を振り翳した。
「グワァァ!!」
威勢の良さも束の間、無数に居たゴロツキはその場に倒れ伏す。そこに立っているのはただ一人、白髪赤眼の青年だけだ。
「威勢の割に実力はこんなもんか。おいお前ら、この俺にこんなめんどくせえことけしかけたんだ。タダじゃおかねえぞ。」
先ほどとは立場が逆転して青年が畳み掛ける。一瞬にしてリーダー格以外の意識がなくなり残ったリーダーは青年に首を掴まれている。
「ゆ、許してください...!へぐぁっ!」
許しを乞うや否や最後の一人も意識を刈り取られた。
「ふむ俺に突っかかってきたからどこぞのギャングの刺客かと思ったがただの野党か。」
そう言って青年はその場から立ち去る。無様な姿となったゴロツキたちを残して。
幸いここは王都の中でもスラムに近い場所だ。暴力沙汰も日常茶飯事で青年がやったことを咎める人などいないだろう。
嫌な目にあったと思いながら青年は当初の目的のためスラムの方へ足を早める。
しばらくして、ポツンと立っているおんぼろの家の前で足を止めてノックをする。
「【鴉は】」
「【何れ鮮血に染まる】」
合言葉なのだろうか、家の中から聞こえた声に青年がそう返すと人知れずドアが開く。
「店長、しばらくぶりだな。早速だが仕事を少し分けてくれ。金が尽きて久しいんだ。」
「おう、坊主か。またこの時期になったか。お前に渡せるのはこの辺だな。」
そう、ここはスラム街にある裏ギルドである。ここでは通常のギルドより危険だが報酬が割高な依頼を受けることができるが、そもそもギルドに入れるのが合言葉を知っている一握りの人々なのであった。
「ふむ、ではこの依頼を受けさせて頂こう。」
そう言って青年が選んだ紙の概要には『吸血種による人間オークションからの人間の奪還』と書いてある。
この世界には人間の他に色々な種の亜人がいる。それはドワーフ、エルフ、蜥蜴人など様々だ。
その中の一つに「吸血種」がある。彼らは正確に言えば下級吸血種と言われ、既に討伐されたと言われている真祖、上級吸血種とは区別されるが、今はもう下級吸血種しかいないため一括りにそう呼ばれている。
しかし「下級」と言っても弱点である太陽の下を避ければその身体能力は他のどの種より高く、食料として人間を売買しているのであった。
今回の依頼はその吸血種によるオークション場に忍び込み、攫われた人間達を助けるというものだった。
「気をつけて行ってこいよ、レイ坊。」
「失礼な、私にはレイノワールという名前がある。」
「はいはい、じゃあなー。」
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