第6話

寂地山じゃくちさんの山頂にも観測用の機器を設置した森本もりもとはたけ伊織いおりは、17時過ぎに宿泊するホテルへと到着した。

夕食は途中のファミレスで済ませて、コンビニで缶ビールと缶チューハイ、スナック菓子を買い、二人は浴衣に着替え森本の部屋で乾杯する。

「とりあえず初日は無事終了した。君も初めての事ばかりで疲れたんじゃないか?」

森本が缶ビールを一口飲みながら畑伊織に話しかける。

「いえ、私はまだまだ動けますよ。明日からもっと本格的に調査したいです」

畑伊織は、部屋にあったコップにチューハイを注ぎ、口に運ぶ。

凄く上品な飲み方をするなと森本は思った。

「今夜はとりあえずゆっくり休もう。君も、のんびり温泉にでも入ってきたらどうだい?せっかく山口県まで来たんだしね。調査に雁字搦がんじがらめになりすぎるのも良くないから」

「でも先生は、どうして結婚されないんですか?」

不意に意図していない質問が飛び出し、森本は苦笑する。

「こういう仕事をしていると、何日も家に帰らなかったりするから。研究室に閉じ籠ったりしてね。だから独身の方が私には合っているんだろう」

森本は缶ビールを飲みながら、コンビニで買ってきたポテトチップスをつまむ。

「えー、でも勿体ないですよ。さっきの寂地山の時もそうでしたけど、凄く気を使ってくださって、私嬉しかったです」

畑伊織も一緒にポテトチップスを食べながら言う。若干頬を赤らめているのは、お酒のせいだろう。

「君のお父さんに聞けば分かると思うけど、私の私生活は結構杜撰ずさんだよ。数年前に一度だけ女性と同棲した事はあったが、その時も半年も続かなかった」

「先生って、根っからの学者タイプって感じなんですね。研究に没頭する感じも、私は素敵だと思いますけど」

「なるほど。学者タイプって表現は聞こえが良いね。今度の合コンで、そう言ってみようかな」

二人で冗談を言いながら、何時間も喋っていた。

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