『ナノブレード・ガーディアン』 -未来を継ぐ者たち-
ソコニ
第1話「血塗られた夜」 ―風の覚醒―
西暦2185年。環境変動により電子機器が使用不能となった世界で、ナノテクノロジーで強化された日本刀が新たな力として台頭していた。
その夜、霧島家に襲撃者たちが現れたのは夕食時だった。
「カイト、裏口から逃げるんだ!」
父の叫び声に、十四歳の霧島カイトは我に返った。食卓を囲んでいた穏やかな時間が、一瞬で地獄に変わる。
黒装束の男たちが、漆黒の刀を振るう。かつての電子機器に代わり、ナノマシンで強化された刀が、新時代の武器となっていた。
「パパ!ママ!」
妹の悲鳴が響く。カイトは立ち上がろうとしたが、父に押し戻された。
「生きろ、カイト。おまえは生きなければならない」
父の背中が見えなくなる。ナノテク強化刀の青い光が閃き、悲鳴が響く。カイトは逃げた。涙を流しながら、闇の中へと逃げ続けた。
雨が降り始めた頃、カイトは崖際で足を止めた。追手に追い詰められ、もう逃げ場はない。
その時だった。一陣の風とともに、一人の男が現れた。長い灰色の髪を後ろで束ね、深い切れ長の目を持つ剣士。伝説の剣士、轟天牙だった。
「下がれ、小僧」
轟の放つ一撃は、追手たちを一瞬で吹き飛ばした。漆黒の刀身から放たれる波動が、夜の闇を切り裂く。
「なぜ...なぜ、うちの家族を...」
カイトの問いに、轟は重く目を閉じた。
「その答えを知りたければ、強くなれ。私が教えよう」
轟は古びた道場に住まう剣術の達人だった。環境変動後の世界で、ナノテク強化刀を扱える数少ない熟達者の一人である。
「剣の道を往かば、真実も見えてくるだろう」
カイトは拳を握りしめた。家族を失った悲しみと怒り、そして新たな決意が胸の中で渦巻いていた。
こうして、少年の苛烈な運命の歯車が、動き始めた。
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