第4話 旧神の印
8月4日VRPGの発売日俺は大きな不安を抱えていた。それもそのはず、あの後予定が合わず結局初顔合わせが当日になってしまった。最低限挨拶程度はすまして起きたかった。
「大丈夫かな……」
発売直後午前10時にネットで購入し即
『カオスルルイエ~VRPGへようこそ』
甲高く機械的で女性の音声だ。
『本ゲームではTRPG、マーダーミステリーをプレイすることが可能です。それに伴い新規ルールを採用しています。チュートリアルを開始しますか?』
このゲームマダミスもできるとは全く知らなかった。今度こっちもやってみるか、とそんなことはさておき勿論チュートリアルはNOだ。本来だったらじっくりと読んでおきたいところだが、何故か二人とも招待したグループに入ってくれないから合流を円滑に行うため俺はさっさと行った方が良いだろう。
『アバターの設定を行ってください』
シナリオに行く前の交流ワールドで使用するアバターを決める必要があるのか。この時点でシナリオに使えるアバターをキャラクリしたり交流ワールドで使用するアバターを作成することもできるらしいし結構便利だな。
俺はいつも使ってる可愛くモデリングされたアイホートという神話生物のアバターを選択した。
____________________________________
「すげえなこの人口……」
交流ワールドはいくつもチャンネルがあるらしいが最初は同じところに飛ばされるようだ。そのせいか既にざっと1000~2000人程度はいる様だ。こんなに密集しててラグ一つないのは天下のクラフト社といったところか。というかこんなにもチュートリアルをすっ飛ばす奴がいるんだな。と感慨にふけっていると別アプリでヒバナから連絡が来た。
『どこで集まろっか?』
チャンネルごとにマップが異なるようだが初期チャンネルはタイトル通りにルルイエをモチーフとした海底都市のようだ。リス地は人が多いからできるなら避けたい。つかこいつグループ参加の通知に気づいて無さそうだな……一応言っておくか
『中央にある一番高い塔入口周辺で集まろうぜ、他の二人にも連絡しとくわ。
一応グループ作っといたから入っといてくれ』
ここも人は集まるだろうがリス地よりかはましだろう。それにマップは馬鹿みたいに広いがファストトラベルもあるし合流は簡単そうだ。
もたついている間に早めにチュートリアルを終えた人がぞろぞろと増えて来たしさっさと移動する。
塔の入り口付近に到着すると見慣れたメスガキアバターがこちらに手を振っている。
「あ!居た居たアララギ君、この速さは君もチュートリアル見てない感じ?」
「まぁ誰かさん達がグループに入ってなくて合流がだるそうだったからな」
「いや~~ごめんごめん。公式シナリオのキャラクリとキャラシ作ってたら気づかなかったんだよね。」
「え?二日前には送ったぞ?てかもう二つともやったのか?早すぎない?」
「あれ?知らない?ちょっと前からキャラクリとキャラシ作成用のアプリがでてたの。ヤサガラスさんもグループ入ってないし私と同じでキャラクリに夢中で気づいてなかったんじゃない?」
ちょっと初耳なんですけど?……てことは今からやるってなると結構待たせちまうか?
「あぁ、でも拘らなければすぐ終わるよ。あんま気にしないタイプでしょ君。それより初心者の子はカオルちゃん?でいいの?」
「あぁ多分な、まんま本名だけどあいつリテラシー大丈夫か?......」
あいつの本名は
ちなみに俺の本名は
「あの~しゅう、あ、アララギ君......だよね?」
突然後ろから声をかけられた。そこにはカオスルルイエ購入特典で付いてくるかわいらしくモデリングされたミ=ゴが居た。直近で見た最悪の悪夢が居て一瞬体がビクッと震えたがすぐにネームタグから薫だと気づいた。
「やっほ~~君がカオルちゃんだね、今日からよろしく~~」
いきなりお腹?と呼ぶべき場所に顔を埋め抱き着いている。
こいつファーストコンタクトでこれとかすげぇな。
「あ、初めまして!ヒバナさん?ですよね?初心者ですけどこれからよろしくお願いします!!しゅ、アララギ君も今日はお願いね」
「おう、まぁ楽しもうぜ。ところでチュートリアルはやったか?俺やらなかったからちょっと不安なんだよな」
チュートリアルをしなかったために死ぬようなことはないだろうが、基本シナリオは一回しかできないものだからあまり適当にやりたくはない。
「細かいところまではさすがに見れてないけどある程度は私でもすんなり理解できたからアララギ君なら大丈夫だと思う」
ならってのがよく分からんがまぁカオルがいうなら大丈夫なんだろう。
「あと一人はもう少しかかるかな~?その人GMメインの人だからチュートリアルでルールを読み込んでそう」
「まぁ別に人を長時間待たせる人でもないしそのうち来るだろ」
と言っていたら目の前にこれまた見慣れた鴉のアバターが突然姿を現した。
「うおっ!?」
きっとファストトラベルで来たのだろう。しかしさすがに驚きを隠せず尻餅をついていしまう。
「おぉ、こんな急に移動するんだね。ごめんねルール深く読んでたら遅くなっちゃった」
鴉の羽で器用に手をつかみ立ち上がらせてくれる。
「あなたがカオルさんですよね?突然の誘いで参加してくれてありがとうございます。これからよろしくお願いしますね」
カオル方を向きヒバナとは対照的な丁寧な挨拶をするヤっさんだが、カオルの方はぽかんとしていた。
「えっ?あ、はじめまして!や、ヤサガラスさんですよね?最近配信見させていただいてます……えっアララギ君ヤサガラスさんと友達だったの⁉」
カオルが急に身を寄せ驚いた顔で尋ねてくる。それに関しては俺も本当に分からん。SNSで配信上でのPL募集してた時に応募したら偶々当たって気に入ってもらえただけなんだよな。
「ささ、顔合わせも終わったし早速行こうよ!公式シナリオ」
意外なことにヒバナがウィンドウを開き俺含めた三人に公式シナリオの参加承認を送る。
「お前チュートリアル触ってないのに凄いな……」
「まね、ここ来て一人の時ちょっといじってたんだ」
全員が参加承認ボタンを押すことで4人の足元に魔法陣が現れ、紫紺色に妖しく、だが美しく輝き、目の前に大きな1つの扉が現れた。
「旧神の
ヤっさんが小さい声で呟く。よく見ると全ての扉には歪んだ五芒星の中心に燃える瞳が描かれている印が目に入った。
「え?何ですかその旧神の印って?」
困惑気味な声色でカオルが尋ねる。
「確か護符的なものでしたよね?」
「あれ?詳しいねアララギ君、私全然知らないや」
こいつ……一緒にやったシナリオに出て来ただろう?.......
「その認識は間違ってないよ、人や世界観の解釈によって効果が違うんだけど神話生物の出入り口を封鎖する的な意味もあるね、ま効かないやつも多いけど.....」
「うっわ趣味悪いね~~~~この先に神話生物がいることを暗示してるって意味でしょ?」
扉の周りを一周し深く観察しつつ苦笑いするヒバナ。変な所で鋭いのはなんなんだ?
「ま、うだうだしてても仕方無いし行ってみようぜ」
扉の目の前に歩いていくと同時に両開きの扉が自動で開く。その先には黒く雲がかった闇が広がっていた。
「こ、この先に進むって結構怖いですね……」
「だーいじょーぶ!!全員一緒に入れば怖くないから」
ヒバナがカオルの手の一本を取り歩く。全員が闇まで一歩ということまで近づいた。全員が顔を見合わせ合図と同時に四人は一歩を踏み出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます