第4話「謎の男、クラウド」
バトルホールでの勝利から二日後。空とアリアは「忘れじの書架」で新たなカードを探していた。
「おや、噂の新人か」
低く落ち着いた声に、二人は振り返る。そこには黒いコートを纏った青年が立っていた。白に近い銀髪。鋭い眼光。
「クラウド様!」
店主が慌てて腰を折る。空は眉をひそめた。
「クラウド?」
「この街一の物語使い。いや、もしかすると王都でも五指に入るかもしれん」
店主の説明に、クラウドは無表情のまま店内を見渡す。
「レインとの勝負を見させてもらった。面白い物語だ」
クラウドの視線が、アリアのカードに向けられる。
「だが、気をつけた方がいい。全ての物語が、語られるべきとは限らない」
その言葉に、アリアが僅かに身を震わせた。
「何が言いたい?」
空が一歩前に出る。
「バトルで確かめるか」
*
バトルホールには、クラウドの名を聞きつけた観客が溢れていた。
「来いよ、新人」
クラウドが取り出したのは、漆黒のカード。「深淵の語り部」。
空は「紡ぎ手の戦士」を構える。しかし――
「物語の深淵よ、全てを飲み込め」
一瞬。空間が歪んだかと思うと、戦士の姿が闇に呑まれていく。
「なっ!」
「未熟な物語は、深淵の前では無力だ」
クラウドの冷たい声。「紡ぎ手の戦士」は跡形もなく消失。空のライフポイントが一気にゼロまで減少する。
会場が静まり返る。あまりにも圧倒的な力の差。
「お前のカードには、まだ真の物語が宿っていない」
クラウドの視線が、再びアリアに向けられる。
「そして、お前。封印された物語に手を出すな。目覚めれば、取り返しのつかないことになる」
「アリアの記憶が、そんなに危険だというのか?」
空は敗北の痛みを押し殺して問う。
「暴かれるべきでない真実もある。それだけだ」
クラウドは静かに去っていく。その背中には、計り知れない物語の重みが感じられた。
*
「あいつの言う通りなのか?」
店に戻った空がアリアに問う。
「私には……分からない」
アリアは自身の曖昧なカードを見つめる。
「でも、知りたい。この物語の、本当の意味を」
その時、アリアのカードが微かに光を放った。まるで、彼女の決意に呼応するように。
「なら、一緒に探そう」
空は敗北を糧に、新たな決意を固める。
「俺たちの物語は、誰にも止められない」
夕暮れの街に、予感めいた風が吹き抜けていった。
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