The monster startover

@ayano9

プロローグ

「え?」


お風呂場で少年は我が目を疑っていた。頭を洗い終え顔を上げると、さっきまで間違いなく自分しか居なかったはずのお風呂場に見知らぬ少女が立っているからだ。


結い上げられた藍色の髪、顔の横に垂らされた赤メッシュ。そして愛らしい顔立ちであるが、勝ち気そうな橙色の双眸。


だが少年の目を最も惹いたのは、少女の可憐な容姿もそうだが、まるで吸血鬼のごとく尖った爪と耳、蝙蝠を彷彿とさせる背中の羽、口元から微かに出た八重歯だった。


そう、明らかに人間とはかけ離れたその姿はまるで''この世界''の住人だった。


少年は目の前の少女に問う。


「お前、誰だ」


至極真っ当な疑問だった。少女もまた混乱していたのだろう。ハッとなって我に返ると少年の質問に答える。いや、答えかけようとしたと言った方が妥当だろう。


「ウチは...」


少女は言いかけると、少年を指さしてきた。そして顔を真っ赤にしてこう言ってきたのだ。


「お、お前こそ誰だゼ!!」


そう、これが力を得る為に"自ら怪物になる事''を選んだ少年と自分の意思とは関係なく''怪物にされてしまった''少女の出会いだった。













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