拾った剣が精神汚染して来るんだけど!?⇔拾われた剣、主に振り回される!?

ゆうきゅうにいと

第1章 うろうろ迷子と運命の出会い?

第001話 拾った精霊剣が


 森の中、何時もの様にフードを深く被って泥だらけの姿で呆然と立ちすくむ俺…………。俺の名はアイリス、絶賛迷子中のソロの傭兵だ。

 薬草の採取依頼で山に来てたけど連日の雨で崖崩れにあって方向が分からなくなってしまった。ああー……、良い歳して迷子とか訳分わかんない。全く、武器もどっかいって見つかんないし、まだ2月でクソ寒いってのにどうすんだよコレ。

 取り敢えず水場を探すか?でも魔物に会ったらなあ……。この辺りの魔物は狼系が多いから見つかったら逃げられないんだよな。悩みながらも水場を探し何となく来た方向っぽい方に歩いて行く。

 

「はあ〜……」

 ついてない、こんなんばっかだよ俺の人生……。

 俺はもう30半ばのおっさんだ。それが何でソロで傭兵なんてやってるかって言うと俺の見た目に問題があるからだ。130cmの子供みたいな身長と女みたいな華奢な体と見た目で男にも女にも何度襲われ掛けた事か……。

 何故か男女共に嫉妬されたり睨まれたりもしてまともにチームすら組めなかった。その見た目の所為で常にフードを深く被っての生活を余儀無くさせられている。それでもフードを取ろうとしたり顔を見ようとされたりするバカがいて本当に鬱陶しい。

 今は若い時に比べればマシになって来たんだけど、逆にコッチが人間不信になってソロのまま此処まで来てしまった。傭兵業はチームを組むのが前提の仕事だ。ソロじゃ碌な仕事が無いからまともな稼ぎにならない。まあ腕が無いのも大きいんだけどな。……はぁ。

 コツコツ小銭を貯めても武器防具が壊れたりちょっと怪我すれば直ぐにお金が吹っ飛んでいく。その度に自分の人生が無価値に感じて絶望してしまう。俺は一体何処で間違えたんだろうか。――まあ例え過去に戻ったとしても同じ様な人生を繰り返すんだろうけど。


 クタクタになりながらも歩き続けていると岩山の近くに一振りの剣が落ちているのを見つけた。ラッキーだな、こんな所に落ちてるってのは持ち主は魔物に襲われて逃げたか殺されたかだろう。この際贅沢は言わない、ボロでも最低限帰れるまで壊れなければ良い。

 辺りを警戒しながら剣の方に歩いて行くと崖の一部が洞窟になっているのを見つけてしまった。更に側にゴブリンが3匹いる。ゴブリンの巣窟になってるのか?――不味いな、洞窟に隠れていて誰も気づかなかったのかも知れない。

 俺はゴブリンにバレないように注意しながら慎重にゆっくりと歩いて行き、やっとの思いで剣を手にした。丸腰で何時間も歩いた緊張感から剣を手にした事でホッと息をついた。


 こんな近くにあったらゴブリンも剣に気づかないハズないよな。ゴブリンが持つにはちょっと大きいけど側に捨てて置く意味が分からない。

《それは我が精霊剣だからなのじゃ》

「(ひゃうっ!?)」

 頭の中に声が響いてきた!余りの驚きに体がビクッと震えて声が出そうになる。慌てて口を押さえて周囲を見渡し、ゴブリン達も何も気づいていないのを確認してから剣を見る。

《やっと精霊剣の使い手が現れたと思ったら随分と華奢な男じゃのう。顔もメンコイし女子かと思うたぞ》

「精霊……剣?」

 頭の中にジジイ口調の幼い女の声が聞こえて来たけど見た目はただの打ち捨てられた小汚い剣にしか見えない。容姿については散々言われ慣れてるから流してやったけどな。

《無礼な、使い手に語りかける事の出来る剣がただの剣のハズがある訳が無いのじゃ》

 頭に響くんだよ五月蝿いな。くそっ、変な剣を拾ってしまった。けど他に武器も無いし取り敢えず町に戻るまではコレで我慢するしかないか。

 いや……そうか、町でコレ売れば新しい剣を手に入れられるかな。

《何と罰当たりな!この精霊剣を売り払うと抜かすかっ!?》

 いや、だってお前五月蝿いし汚いじゃん。

《ふん、ちょっと待っておれ……》

 うおっ!?剣から半透明の幼い少女が出て来た、……って言うか。

「ねぇね?」

 ねぇねと言うのは俺の妹のアネモネのあだ名だ。俺達はとても仲が良くて家族でもねぇねとあだ名で呼んでいたのは俺だけだった。ねぇねからそう呼んでって言われたんだよな、ふふん。

『どうなのじゃ?お主の潜在意識から貰った姿なのじゃ。これなら念話じゃなくても声が届くのじゃ』ふんす!


 手のひらサイズで胸を張ってふんぞり変える10歳頃の妹の姿をした何かがいた。半透明の体に蝶々のような羽をつけた姿は絵本のイメージのままの精霊なんだけど。

『我は元々精霊なのじゃ。精霊には決まった姿形は無いからの、お主のイメージを借りたのじゃ』

「いや、だから……何で妹……?」

『それはお主がシスコンじゃからかの。我の所為では無いのじゃ』

「ねぇねはそんな事言わねえよ?」

 って言うか妹のイメージが……。まあ、つまり俺の中の妹と精霊のイメージが合わさった姿って事か。

『シスコンは否定せんのか、まあそんな事より我に魔力を込めよ』

「いやシスコンじゃねえよ。もう村を出て20年会ってないんだぞ」

『それで幼子の姿なのじゃな。シスコンだけじゃなくロリコンも入っておるのかと思ったぞ』

 そんな知識どこから……ってもう良いわ。……そう言えば魔法剣とかって魔力を通して使うって聞いた事があるな。コレもそうなのか?

『そんなガラクタ共と一緒にするでないわ!まあ良い、早く魔力を込めるのじゃ』

 ったく、何でそんな偉そうなんだよ。ぶつぶつ言いながらも魔力を流していく。

『足らんぞ。もっと多く一気に流さんか』

 くっ、マジかよ。俺魔力はそんなに無いんだぞ。全身から魔力を腹に集めていって……纏めて剣に流し込んだ。

『おっ、ヨシ。……ふんっ』

 殆どの魔力を消費して座り込みながら剣を見ていると、剣が僅かに震えて仄かな光を放ち、汚れが落ちて太陽を反射して光を放っていた。

『どうよ、コレでも汚いと申すか?』

「いや……」

 まあ汚くは無い……な。ドヤ顔の妹精霊、ちょっと可愛いと思ってしまうのも仕方ないだろう。

『なんじゃその微妙な反応は』

 いや、だって魔法剣ってもっとピカピカしたイメージがあるから。――まあ魔力を通せば手入れ要らずってのは凄いけど。剣は血脂で直ぐに切れなくなるから連戦するにはその都度簡易でも手入れしていかないとイケないし。


『精霊剣とまで言われている我がそんなチャチな能力1つのハズがないのじゃ!』

 おお、――他に何が出来るんだ?

『今の半分程の魔力を通せば切れ味が強化されるのじゃ。他にも属性魔法への変換なども出来るがその辺は貴様の素質次第じゃな』

 うーん。有用なのは分かったけど、俺は魔力少ないんだよなぁ。手の平サイズのファイヤーボール5発も撃てば空になるし。まあ牽制には使えるし、これまでソロでやってこれたのはその魔法が使えたからなんだけど。

『そこら辺は相手を斬りつける瞬間だけ魔力を通すようにすれば良いのじゃ!魔力を増やすのも我に任せておくのじゃ!』

 はあ?魔力を増やす??そんな事が出来るのかよ!?

『そう簡単には増えんがの。お主の適正もあるじゃろうし、当面は先に言った様に瞬間瞬間で使うようにするのじゃ』

 ううん、まあそりゃそうか。けど瞬間的にってそんな器用な事出来るかよ。ファイヤーボール撃つのも8秒掛かるのに。

『それもまた修行なのじゃ』

「はあ」

 ――年齢的には引退間近の年齢なんだけどな。












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