第11話「最後の取引」



崩れ落ちた壁の向こうに広がっていたのは、無限に続く巨大なデータの海。

古代取引所の真の姿だった。


「これが...全てだったの」

エリカの声が響く。


「完全なる市場支配...」

クロードが呟く。

「人の意思さえ必要としない、永久に安定した取引システム」


「でも、それは間違ってる!」

コウが叫ぶ。

「市場は人々の願いや希望の集合体だ!」


「その通りピコ!」

ピコが宙を舞う。

「だから私たちは、これを止めないといけないピコ!」


「計算結果が出ました」

リザが緊張した面持ちで告げる。

「このままでは、世界中の魔力が吸収され...」


「全ての価値が均一に...」

アイリスが理解を示す。

「それが、両家が目指した完全なる安定」


「私たちの家族は間違っていた」

セシリアが水晶を強く握る。

「変動こそが、価値を生むのに」


データの海から、無数の光の触手が伸びてくる。


「みんな、準備はいい?」

コウが全員に問いかける。

「最後の取引を仕掛けよう」


「私の『コード魔法』で、システムの中枢に...!」

リザが魔法端末を操作する。


「『契約魔法』で、暴走を抑制します!」

セシリアの水晶が輝きを放つ。


「マーケット家の全魔力を解放!」

アイリスが精一杯の力を込める。


「『価格支配の魔眼』...今度は正しい方向に使わせてもらう」

クロードの右目が金色に輝く。


「そして、私は...」

エリカの体が淡い光に包まれる。

「未来を...守る...!」


「市場予知の魔眼」が、コウに最後の道筋を示す。


「全員の力が一つになった時...」

コウが静かに告げる。

「本当の意味での自由な市場が生まれる!」


無数のデータが交錯する中、決戦の火蓋が切って落とされた。

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