第7話 魔王会議

 魔王会議に出るつもりだ。


 あれからのチャム王国の発展は目覚しい。


 西の国の首都として、体制も整って居るし人口も沢山増えた。


 今年に入ってから、西の国全体に関税を掛けることが出来た。


 この事によって、チャム王国には政庁が出来た。


 名実ともに首都に成ったのだ。


 国の内が固まって来たので、そろそろ外へ目を向けなければ成らない時期でもある。


 余り考えた事は無かったけど、他の魔王達が、俺のことをどう思って居るのかも気掛かりである。


 まず魔王会議に出席すれば、答えは出るだろう、後の事はそれからだな……


 道先案内人として、ドズル一人を連れて行くつもりだ、後は誰も連れて行かない。


 会議の場所は、東西南北が交差する所に山が有るのだそうだ、その山の頂上付近に会議場が立って居るのだと言う。


 馬でも十日以上は掛かるだろう。


 俺は馬の代わりに、ケルベロスに乗って行く事にした。




「ドズルさあ、他の魔王達って、どんな奴らなのだ」


 魔王会議に向かう道中で、俺はドズルに聞いて見た。


「そうねぇ、東のアルテミスはちょっと面倒臭いけどシレーヌとマシュウは大人ね、一度決めてしまうと干渉して来なくなるわ」


「なんだ、そのシレーなんとかって……魔王達の名前かよ?」


「そうよ、南の魔王がシレーヌで、北がマシュウよ」


「ふ~ん、で、そいつら強いの?」


「力関係は、皆んな均等だったわ。 だから良かったのよ、綺麗にバランスが取れて居て。 でもそのバランスも誰かさんが壊しちゃった」


 ドズルが嫌味交じりに答えた。


「だったら俺が一番強いって事じゃん」


「まぁ、そう言う事に成るかもね」


「じゃあさぁ、俺とお前が居れば勝てるじゃん。 向うは三人だろ?」


「なに?あんたケンカ売りに行くの?」


「そうじゃねぇけどさ、面倒くさい事言って来たら二人でサクッと行ってやろうぜ」


「あんた見た目はホント可愛いのに、中々の武闘派ね……」


 ドズルが呆れた顔をした。


 しかし俺は本気でそう考えて居た。


 始めから平和的共存など有り得ない、悪の王様が魔王なのだ。


 魔王を宣言した時から、俺はそのつもりだった、やりたいようにヤル。


「アレがそうよ」


 ドズルが遠くに見える山を指さした。


 あの山の頂上に会議場があるのだが、ここからはまだ見えない。


「あと一時間もすれば着くわよ。 それに、どうやら皆さん御着きのようね」


 ドズルが山の方を見ながら言った。


 雰囲気で分るようだ。


 山全体が、何やら妖しい空気を出しているようで、さっきからケルベロスの緊張が伝わって来る。




 俺はとうとう魔王会議にやって来た。


 下からは解らなかったが、近付いてみると会議場はかなり大きい。


 巨大な宮殿がそこにあった。


 中にサッカーグラウンドが、すっぽり入るくらいの大きさだ。


 四年に一度しか使わないと言うのに、ピカピカに磨き上げられている。


 魔王の権力の象徴と言うことだろう。


 ドズルが説明の為、先に入ると言う。


 俺はそんな事をしなくても一向に構わないのだが、ドズルは平和的共存を望んでいるようだ。


 一応、ニ〜三分ほどタバコでも吸いながら待ってやった。


「行くぞ、ケルベロス」


 俺はケルベロスの背に乗って、会議場の中へと入っていった。




 会議卓を真ん中にして、三匹の魔王が座って居た。


 それを前にして、ドズルが説明して居る途中で俺が入って来たのだ。


 皆んなの視線が俺を見て来る。


 俺も見返してやった、こういう時は飲まれた方が負けだ。


 しばらく誰も言葉を発しなかった。


「ドズル卿は魔王を止め、この者の家来に成ったと言うのだな」


 沈黙を破ったのはシレーヌと言う魔王だ。


「そうよ、シレーヌ卿」


 どうやら魔王間では、名前の下に卿を付けて敬称するようだ。


「そして、その者が西の魔王を継承したと言う事で間違いないのか、ドズル卿」


「その通りよ、マシュウ卿」


 またしばらく沈黙が続いた。


「しかし、その者はフェアリーではないか」


 いま発言したのはアルテミスだ。


「おい、お前。 いま俺を馬鹿にした見たいだが、お前より俺の方が強いぜ」


 俺は思はずキレてしまった。


「な、なんだと」


 アルテミスもキレたようだ。


「試してみるか」


 俺はアルテミスに、特大の稲妻を落としてやろうとして居た。


「お待ちください。 アルテミス卿の無礼な発言、どうかお許しください」


 寸前でシレーヌが止めに入って来た。


 稲妻が落ちる前の、凄まじいエネルギー波を感じ取ったのだ。


 アルテミスの顔も真っ青に成って居る。


「先程の発言、申し訳ありません。 どうかお許し下さい」


 アルテミスが途端に良い子になった。


「お前よう、急に良い子ちゃんになってもダメだ、お前にはじじぃの怨みがあんだからよう」


 俺は爺のことを思い出した。


「じじい?」


「そうだ、お前からはをとらないといけない」


「ち、ちょっと待って下さい。 いったい何のことかわかりません」


 アルテミスが泣きそうになっている。


 他の魔王達からも、先程まであったちょっと下に見ている雰囲気も無くなった。


 逆に、ちょっと上に感じているはずだ。


「まあ、弱い者イジメしてるみたいで嫌なんだが、お前には個人的にあとで話がある」


「はい、何のことやら分かりませんが……」


 ここまで弱々しくなっているアルテミスを、どうこうしても仕方ない。


 いちど爺とで話しをさせて、それから決めることにしよう。


 今この場でこれ以上の事はやめておこう。


「で、俺は魔王として認めて貰えるのか」


 俺は三人の魔王を見廻しながら言った。


「も、もちろんです」


「是非よろしくお願いします」


「よろしくお願いいたします」


 魔王三匹のお墨付きをもらった。


「チャム様はフェアリーでも、世界一強いフェアリーなんだから……」


 ドズルが付け加えたが、三匹の魔王達はすでに俺の強さを肌で感じている。


 俺がこれから先、もし難題を吹っ掛けたとしても決して反対はしないだろう。


 俺のわがままが通ると言う事だな。


 やはり、始めにといて正解だ。


「じゃあ、少し遅くなったが、魔王会議とやらを始めるとするか……」


 俺主導で会議を始められそうだ。


「まずは国の貿易の事だが、魔王会議が終るまで遠慮して居たが、今日からでも東北南の地へ貿易船を送るかも知れないが、それは了解してくれるだろ」


「はい、解りました」


 マシュウが返事をして、あとの二人も頷いていた。


「先程見て貰った通り、パワーバランスがすっかり変わってしまったが、皆の領置はそのままとしても、全世界の首都は西の国の我が王国としたいのだが、どうだろうか」


 俺はもう一つ踏み込んだ話をした。


 皆、一瞬黙ったが誰も反対する者は居なかった。


 俺はその黙りを、了解と取る事にした。


「俺は魔王が支配する国だが、民が幸せに暮らして行けるように発展させていきたいと、最後に語った」


 他の魔王達にはどの様に俺の話しが伝わったか解らないが、取りあえず言いたいことは全て伝えた。


 それから議題をシレーヌ卿に移して、今度は聴く側に回った。


 シレーヌ卿からの議題は、勇者に関しての話しだった。


 最近質の悪い勇者たちが現れて、時々皆んなの国を荒らしていると言う事だった。


 中には俺みたいな強力なアイテムを持つ者も居て、困っていると言う。


 やはり、魔王の敵は勇者と言う事なのだ、ドラクエと変わらない。


 いつかは俺の前にも勇者が現れる事だろう。


 魔王になったからそれでお終いと言う訳には行かない様だ……気を付けなければいけない。


 こうして四年に一度の、魔王会議は終了したのだ。


 四大魔王の1匹になったが、パワーバランスで言えば、俺が断トツだ。


 今日の収穫で言えば、まずまずではなかろうか……


 そのあとアルテミスともをつけて、なるべく早く爺の元へを入れに来ると言うことで落ち着いた。


 一応これで俺の顔も潰れる事は無い。


 ドズルとケルベロスを伴い、我が国へ引き上げる事にした。

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