第2話 熱から始まる

1年前。

あまりにも仕事が出来ない僕に部長の明は皆を返してずっと付き合ってくれていた。


トロい、雑、ケアレスミスの連続。


そんな僕にずっと寄り添ってくれたのが明だった。



「遅くてもいいから間違うな。」

「何がわかんない。わかんないままにするな。」

「計算方法分からないなら言え。間違えたまま、わからないままにするな。」


口調はそんなに優しくない。

でも隣に座って優しく教えてくれる。

言ってる事とやってる事のギャップにまたやられてた。



明に教えて貰いながら仕事していく中で効率だったり、正しいやり方を覚えていき、定時上がりが増えてきた。



でも、ある日、倦怠感で全く仕事が手につかず溜まりに溜まってしまった。


そんな僕を明が見つけて、

僕のひたいに手を当てた。


「お前、立てるか?」

「立てます…」


その瞬間、フラフラと倒れ込んだ。

すると明が支えてくれて、「病院行くぞ」と明の仕事の手を止めて病院まで連れて行ってくれた。


病院に着いても優しくて、

待ち合いの椅子で力なく座る僕に肩を貸してくれて、包み込んでくれていた。


前日から何も食べる気が起きずそのまま仕事に来た。飲まず食わずで居たのもあって脱水症状になっていた。


点滴を流され、その間も明はそばに居てくれた。



処置が終わって、「お前今日うち泊まれ。」と言われ判断も出来ないまま泊まることに。



その日、明も早退し僕の面倒を見て見てくれた。

明の広いベットに横にならせてくれて、


……そのままキスされた。


「…嫌か?」

「嫌じゃない…」


僕は明を下から引き寄せて倍に答えた。

今考えると少し驚いていた。

でもそこは明..。上に立たれるとしゃくに障る。


熱が出てる僕の首に手をかけた。


僕が微笑むと、


「付き合うか?」と。


『こんな状況下でバカか?』と今なら思うが思うだけできっと今でもどんなタイミングでも嬉しいんだろうな。



僕は「うん、お願いします」と即答した。


今まで、女性としか経験は無い。

でも、満たされなかった。

甘えたい時に甘えられなくて抱きしめて欲しい時に言えなくて…どこか、本当にして欲しいもの、こと、を我慢していた。



でも明は…あんなに熱が出てる僕にまたキスをしてくれた。




「明…」

「ん?どうした?…」

「……、」

「言えよ。」


分かっていて聞くのがズルい。


「わかってるよね。」

「言えよ。」

「…明が好き。」

「俺も。凌生が好きだ。…むしろ男でもいいのか?」

「明だからいい。」

「ありがとな。」




この日初めて名前で呼びあった。


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