第6話 初めての
サンタクロースの国にて。
(ああもうっ!!! 本当に絶対に毎年現れるよねクリスマスプレゼント泥棒っ!!!)
サンタクロース専用のスマホを取り出して、相棒のトナカイである
とてつもなく恐ろしい形相で。
一分一秒を惜しむこんな大切な時に邪魔をしくさったクリスマスプレゼント泥棒に怒りの、もとい、正義のサンタクロースヒゲビンタをお見舞いしなければ気が収まらなかった。
(そもそもセキュリティに問題があるよありまくるよ
鼻息を荒くさせ血走った目をあちらこちらと忙しなく動かす露衣。クリスマスプレゼント泥棒出て来いと声を荒げながらひた走っていると、見つけたのである。
クリスマスプレゼント泥棒、ではない。
冬和である。
一緒に居ると思われた綾斗の姿は露衣の視界に映ってはいない。
「冬和さんっ!!!」
露衣は足がもつれそうになりながら駆け走る速度を上げて冬和の名を叫んだ。
幼児化している今の冬和がクリスマスプレゼント泥棒に鉢合ってしまったら。
クリスマスプレゼント泥棒が子どもを人質に取るような極悪非道なやつだったら。
嫌な予感だけがどんどん膨らむ露衣の視界に映る冬和が、頭の上部から狼の両耳を出し、ふくふくの頬のように全体的に丸々とした少年から、瞬く間に小さいながらもすでに雄々しく凛々しい狼の姿へと変化したかと思えば、露衣目がけて突進してきたのである。
露衣は両腕を大きく広げて抱き留めようとしたのだが、それは叶わなかった。
冬和は露衣を飛び越して後方へと駆け走って行ったのである。
避けられたと衝撃を受けたのは一秒間。
露衣が素早く振り返り冬和の後を追おうとしたのだが、それも叶わなかった。
「冬和さん」
露衣は一人のサンタクロースの脚に噛みついている冬和の姿を目にして、思わず立ち止まってしまった。
怖い、と、思ってしまったのだ。
(2025.6.11)
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