神断英雄譚

かず

第1話

「あぁやっと終わったんだ…」

俺は1人暗い部屋で色んな感情の入り混じる涙を浮かべながら、深い眠りへとついた。

そうこれも全部あの日からだ…


〜5年前〜


「アイゼルーこっちにきてくれ!」

隣の家のおじさんが叫ぶ。

「わかりました、今行きます」

いかにもめんどくさそうなのがわかる返事をし、おじさんの家へと足を運ぶ。

俺はその日も、いつも通り真面目に働き、ベッドに入る。

その夜、夢を見た。

どこまでも続く、とても暗い道。

その道を夢の中の俺はずっと歩き続ける、ずっと、ずっと…

夢の中の体感時間で1時間ほど歩いた時、目の前にキラキラと光る扉を見つけた。

こんなに綺麗なものを俺は見たことがない。

ずっと見ていると吸い込まれそうになる。

何を血迷ったのか夢の俺はその扉の中へとはいって行ってしまった。

その瞬間、俺は深い眠りへと落ちた。

翌朝、夢のことを思い出しながら起きると、目の前には今まで見たこともないくらい綺麗な花畑が広がっていた。

「どこだ…ここ?」

俺はまだ夢の中にいるのだと思い、もう一度眠りにつこうとした。

だが、なぜかおかしい。

今までとは違う、現実のような感覚だった。

「まさかこれは神転譚のようなことが起きているのか?」

『神転譚』

俺の国に伝わる、とある昔話だ。

はるか昔、1人の農民の男がいた。

その男はいつも通り眠りにつくと不思議な夢を見た。

次の日起きると、今までいた世界とは全く違う世界に飛ばされていた。

本の中ではその世界を「異世界」といっていた。

男はその世界で神と出会い、神に歯向かう悪人を倒すことを命じられ、旅へ出た。

男は、悪人の集団を制圧し、元の世界に帰り、神から与えられた財宝を持ち帰り、幸せに暮らした。

このことから神に転移させられた男の英雄譚。

略して『神転譚』となったのだ。

「全く同じような状況だ」

俺は途方に暮れその場に泣き崩れた。

泣いていても仕方ないので周りを探索することにした。

どこを見ても一面花畑。

30分ほど歩いた時だろうか、目の前に大きな町が見えた。

確か神転譚によるとあの町のなまえを「シグリス」といっていたはずだ。

俺はその街に向かって歩き出した。    

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