コミュ障な僕、人見知りを治したくて学園1モテる美少女を目で追いかけてたら、お近づきになれました。

空豆 空(そらまめくう)

第1話 モテる羽鳥さんと、ぼっちの僕。

 僕のクラスには、学園で一番モテる美少女がいる。その子の名前は羽鳥はとり桃花ももか

 

 彼女がモテるのは、その恵まれたルックスはもちろんだけど、明るくて気さくで話しかけやすいからなんだろうな。


 その証拠に、今だって教室の真ん中で男女みんなに囲まれて楽しそうに談笑している。人懐こくて、人見知りとは無縁、という感じ。


 それに対して僕は……平凡な見た目に得意なこともなく、誰に話しかけられることもなく、ただそれを擁護するように自分の席でラノベを読んでいる。


 そうでもしてないと、僕だけなことを実感して悲しくなってしまうから。


 でも、僕だって……本当は少しくらい友達が欲しいし、誰かと話したり、一緒に帰ったりしてみたい。ただそれが、僕にとってはとても難しいことなんだ。


 あーあ。僕も羽鳥さんみたいにいろんな人と楽しく話せたらいいのになあ……。


 そう思いながら羽鳥さんを見ていて、ふと思いついた。


 そうだ。羽鳥さんのことを見習って、僕も真似してみたらいいんじゃないかな。

 羽鳥さんみたいに急にたくさんの友達を作るのは無理でも……誰かに話しかけるきっかけくらいは掴めるようになるかもしれない。


 よし、善は急げだ!!


 ――それから僕は、人見知りを治すため、羽鳥さんを観察してみることにした。



 そうして羽鳥さんを眺めていると、羽鳥さんは一日の間にいろんな人と話しているなあと思う。


 学校に来たら、おはようの挨拶からはじまって、誰かが髪型を変えていたらすぐに気付いて褒めてあげたり、誰かが落とし物をしたら拾って声をかけてあげたり。


 羽鳥さんが授業中に消しゴムを落としちゃった時は、それを『拾って』と小声で隣の人に声をかけ、笑顔でお礼を言ったりもしていた。

 

 その、ひそひそとしたやり取りは、見ている僕まで羨ましくなってしまうくらい、羽鳥さんは可愛いと思う。学校で一番モテるって言われてるのも納得だ。


 でも、こうして見ていると、以外と誰かに話しかけるタイミングってあるんだなぁって気付いた。僕だって、笑顔は無理でも、ちょっとくらいは真似出来るんじゃないかな。


 よ、よし。僕も羽鳥さんを見習って、誰かが落とし物をしていたら拾って声をかけてみよう。


 そう思ったのに。一日経っても誰も僕の前で落とし物をしなかった。


 よ、よし。それならば、作戦変更。僕が消しゴムを落としてみよう。そして拾ってくれた人にお礼を言ってみよう!!


 そう、思ったのに。


 僕がわざと落とした消しゴムは、ころころと静かに転がって……誰も気づいてくれないうちに見失ってしまった。


 あーあ。消しゴム失くしちゃった。


 喪失感で僕は静かに溜息を吐いた。



 休憩時間、気を取り直してラノベでも読もうかな、と思いつつ羽鳥さんを見てみると、羽鳥さんは隣の席の子に話しかけているところだった。


「ねえねえ、ここの問題教えて。次の授業当たるのー」


 羽鳥さんは両手を胸の前で合わせながら可愛い顔をして、そんなおねだりをしている。

 そして顔を近づけて、うんうんと頷きながら教えてもらっている。


 いいなぁ。いかにも青春という感じ。


 僕も真似してみたいけど、さすがにあれはちょっとハードルが高い。あんな事が出来るなら、僕はこんなにぼっちを極めたりなんてしていない。


 だから僕が出来るのは、神様に話しかけるくらい。


(どうか神様、今日も先生に当てられませんように)


 まぁ、そんなこと言ったって、席順で当てられるんだからどうしようもないのだけどね。仕方ないから予習して答えられるようにしておこう。


 いつも僕は、当てられた時にしどろもどろとしてしまうけど、今日の予習はバッチリだ。これなら堂々と答えられるかもしれない。そしたら誰かが『ねぇ、ここ教えて』なんて話しかけてくれるようになるかもしれない。


 そんな淡い期待をしながら当たるまでドキドキしてたのに。僕の影が薄いせいか、僕の番は綺麗にスルーされて、当てられることはなかった。


 神様は意地悪だ。こんな時だけ僕の願いを叶えてくれなくてもいいのに。

 どうせ願いを叶えてくれるなら、羽鳥さんに声をかけられてみたい。なーんて、ごめんなさい、神様、欲張りました。 


 そんなこと、あるわけないよね。だって僕はぼっちで目立たない陰キャだもん。さーて、高望みしてる間にいつの間にかホームルームも終わってたし、帰ろっかな。


 そうして向かった校庭には、すでに羽鳥さんがいた。


 誰かを待ってるようだけど……待ち合わせかなぁ。いいなぁ。僕には待ち合わせる相手もいない。誰かに『待ってたよ』なんて言われてみたい。それが羽鳥さんだったら、……どんなにいいだろう。


 また、そんなあるわけのない妄想をしてしまっていると、羽鳥さんが僕に近づいてきて、『ねぇ』と声をかけてきた。


 でも、僕知ってるんだ。こういう時って、決まって僕の後ろに人がいて、その人に声をかけてるっていうパターンなんだよね。


 さーて、僕の後ろにいるのは誰なんだ? イケメンかな。それとも羽鳥さんの友達かな。


 気になって後ろを振り返ってみた。けれど、僕の後ろには誰もいなかった。


 え!? こ、これは、もしかして――ゆ、幽霊!? 僕の後ろに幽霊がいるの!?


 え、怖い怖い怖い。僕、オバケの類は苦手なんだ。さっさと帰ろ。


 そう思った時――


「ねぇ、影山かげやま君っ」


 羽鳥さんに声をかけられた。


 忘れてたけど、僕の名前は影山かげやまとおる。自分でも忘れてたのに、まさか羽鳥さんが僕の名前を憶えてくれていたなんて。驚いて、返事をする声が喉の奥に引っ込んでしまった。


「ねぇ、影山透君ってば!!」


 すると、まさかのフルネームで呼ばれた。え、僕のフルネーム覚えてくれてたなんて。まさか、待ってたのって僕の事!?


 ――――でも……なんで??


 僕には全く見当もつかなかった。 



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コミュ障な僕、人見知りを治したくて学園1モテる美少女を目で追いかけてたら、お近づきになれました。 空豆 空(そらまめくう) @soramamekuu0711

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