エピローグ 「新たな伝説の始まり」

帝都の中心に建つ巨大な建物。

その正面には「リノア皮膚科学研究所」の文字が輝いていた。


「皆さん、お肌の調子はいかがですか?」


リノアの明るい声が、広々としたロビーに響く。

貴族から平民まで、様々な身分の人々が集まっている。


「リノア様、『セラミド強化クリーム』のおかげで、乾燥肌が劇的に改善されました」

「『アクアポリン活性化美容液』で、肌の潤いが長続きするようになりましたわ」

次々と寄せられる感謝の言葉に、リノアは優しく頷く。


研究所の一角では、ヴィクターが若手魔法師たちに講義を行っていた。

「皮膚のバリア機能と魔法の相互作用について、新たな発見がありました」


彼の発表した論文「魔法使用頻度と経皮水分蒸散量の相関関係」は、魔法医学界に革命を起こしていた。


「リノア様」

クレアが駆け寄ってくる。

彼女は今や、皮膚科学の第一人者として成長していた。

「新しい美白成分の臨床試験結果が出ました。メラニン生成を抑制しつつ、細胞の抗酸化機能を高める効果が確認できました」

「素晴らしいわ、クレア。論文にまとめて、帝国科学アカデミーに投稿しましょう」


喜びの声が次々と上がる。

かつて悪役令嬢として恐れられた彼女は、今や帝国を代表する賢女として崇められていた。


そこに、アレクサンダー王子が現れた。

「リノア、朗報だ。父上...陛下からの呼び出しです。」

彼の言葉に、場の空気が一瞬緊張する。

「陛下より、騎士の称号を授与するとのことです」

歓声が沸き起こる。

「これは前回の...不手際のお詫びも込めてとのこと。令嬢が騎士の称号を受けるのは、王国初だそうです」




「リノア様、陛下がお見えです」


静まり返るロビー。国王陛下が、親衛隊を従えて入場してきた。


「エリザベート・ノア・フォン・ローゼンブルク...いや、リノア・フォン・ローゼンブルク。そなたを呼び出した」


緊張が走る中、国王は穏やかな表情で続けた。


「そなたの功績を讃え、騎士の称号を授ける」


会場がどよめく。

令嬢が騎士の称号を受けるのは、帝国史上初のことだった。


「これは先日の...不適切な命令への償いでもある」


国王の言葉に、先日の処刑状の件が蘇る。


「陛下...」


「そなたの知恵と慈愛は、我が国の宝。これからも帝国のために力を貸してほしい」


「はい、喜んで」


リノアが深々と頭を下げる中、

彼女の脳裏に、最新の研究テーマが浮かぶ。

「幹細胞を用いた再生医療と魔法の融合...」

「テロメア活性と寿命延長魔法の相関関係...」

「ミトコンドリアDNAと魔力の遺伝的要因...」

果てしない可能性が広がっている。


大きな拍手が沸き起こり我に返る。


式典後、研究所の屋上庭園。


「騎士様、おめでとうございます」


クレアが嬉しそうに駆け寄ってくる。

その後ろには、アレクサンダー、ヴィクター、ソフィア、アンジェリカの姿も。


「みんな、ありがとう」


「リノア、君は本当にすごい」

アレクサンダーが感慨深げに言う。

「悪役令嬢どころか、帝国の英雄になるなんて」


「ふふ、運命なんて簡単に変えられるものよ」


夕陽に照らされた街並みを眺めながら、リノアは静かに微笑んだ。


「でも、これはまだ始まりに過ぎないわ」


「どういうことです?」

ヴィクターが興味深そうに尋ねる。


「この研究所で生み出される製品は、単なる美容品じゃない。人々の自信や幸せを作り出すもの」


リノアの瞳が輝く。


「そして、それは身分や国境を超えて広がっていく。いつか、この技術が世界中の人々を笑顔にする日が来るはず」


「素晴らしい夢ですわ」

ソフィアが感動的な表情を浮かべる。


「さあ、みんな。新しい冒険の始まりよ」


リノアの言葉に、全員が頷いた。

かつてのゲームのシナリオなど、もはや意味を持たない。彼女たちの未来は、自分たちの手で切り開いていくのだ。


夕焼けに染まる空を見上げながら、リノアは密かに誓った。

この世界を、もっともっと素晴らしいものにしてみせる、と。

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