夏休みの夕闇~夏休み編~ 二人きりの世界に閉じ込められた歪な男女の物語
苫都千珠(とまとちず)
プロローグ 二人はどうやって夏休みの世界にたどり着いたのか
前作のあらすじ
本作「夏休みの夕闇~夏休み編~」は、前作「夏休みの夕闇~刑務所編~」の続編です。
前作「刑務所編」を読んだことがない方のために、簡単なあらすじをご紹介します。これから前作をお読みいただく場合は、ネタバレにご注意ください。
***前作「夏休みの夕闇~刑務所編~」あらすじ***
主人公の一人は、22歳の男……灰谷ヤミ。彼は、『悲劇的な人生』だった。
彼の周囲では悲劇ばかりが起こるから、誰も彼に寄り付かないし、彼を愛さない。肉親さえ彼を避ける。ヤミはいつも孤独だった。
そんな彼が唯一、心の拠り所にしていたのは『自分で考えた神様』の存在。
自作の『教義』の通りに生きて、天国に行って神様に会うことだけが、彼の生きる目的だったのだ。
ヤミは、大学生になって殺人を犯す。殺した相手は『悪の中の悪』とも言える、どうしようもない男。
ヤミは自分の教義で『悪の中の悪を殺せば天国に行ける』と決めていたから、彼を殺したのだった。
そして……ヤミは殺人罪で死刑を宣告される。
死刑を待つヤミの前に現れたのが、もう一人の主人公『
彼女はなんと、魔法使いだった。
時空の魔女であるユウは、世界に生まれた『時空の
ヤミのいる世界に『時空の歪み』の気配を感じ、この場所に来たのだという。
『一度時空の穴をくぐると、次に時空の穴を作るまでに時間がかかるのよ。ここから出られないし、やることないしつまらないから、お話でもしない?』
ユウはヤミにそう提案し、二人はたくさんの話をする。
お互いの過去の話
ヤミの信じる神様の話
魔法の話
好きな本の話……
こんなに誰かと深く会話をしたのが初めてで、ヤミは今までにない充足感を覚えていた。自分が認められている気がして、嬉しかった。彼は日に日にユウに惹かれていく。
そしてユウも、弱さを隠さず自分を偽らない正直者のヤミに好感を抱くようになる。旅と戦いの中で生きてきたユウもまた、孤独な人生を歩んでいたのだ。
しかし無情にも、灰谷ヤミの死刑執行が刻一刻と迫る。
死刑まで残り10日。ユウはヤミに『もう少し生きてみない?』と提案する。
時空の魔法を使って、この刑務所から一緒に出ていこうと……。
ヤミは迷った。でも、彼の夢は『天国に行って神様に会うこと』。そのためだけに生きてきた。苦渋の決断で、彼女の提案を拒否する。
拒否はしたものの……ヤミは気づいてしまった。
――僕は『火置さんのことが欲しい』と思っている――と。
変わりつつあった二人の関係に目をつけたのが……怪しい刑務所の管理人『カミサマ』。
カミサマはヤミを利用して、ユウが持つ『時空の魔法の力』を自分のものにしようと企む。
ユウへの気持ちに気づいてしまったヤミに向かって、カミサマはこう約束するのだった。
――協力してくれれば、火置ユウとあなたを一生同じ空間で暮らせるようにしますよ――
僕のことを認めてくれたのは今までの人生でたった一人、火置さんだけ。
彼女は、僕が求める神様に近い存在だ。
どうしてもどうしても彼女が欲しい……。
結局ヤミは、カミサマの味方につくことを選んでしまう。
カミサマに捕まり絶体絶命のピンチに陥るユウだったが、彼女は脱出のための最終手段を用意していた。
それは『魔法で世界を創造し、そこに逃げること』。
ユウは、ヤミが持っていた生まれ故郷の記憶と、自分の魔法の力をあわせて、誰からも干渉されない『夏休みの世界』を創造する。
「ね、ヤミ。これから私と、二人っきりの夏休みを過ごす気はない?期間は未定、戻ってこれるかは不明……そもそもちゃんと夏休みが始められるかも未知数だけど」
「……何だよそれ、二人っきりの夏休みって……嬉しいに決まってるだろ……」
無事に世界の生成に成功して刑務所から脱出した二人。
二人がやってきたのは、ヤミの生まれ故郷である海辺の町と瓜二つの世界。自分たち以外誰一人いない閉ざされた夏休みの世界だった。
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