第14話 王丹の正体とアマテラスの逆ギレ

 吉備児島の城の塔の窓にフクロウが一羽たどり着いた。フクロウは窓をくぐるとすぐに変幻した。ヤマタノオロチに変幻していたのと同じ巫女であった。その巫女は古代では老巫女、現代では天野タカコであったが、実際には他の呼び名を持っていた。

 巫女が潜入した部屋の中には一枚の鏡がおかれていた。

「これが王丹ですよ」

 鏡の横には細面の男が立っていた。男はツキヨミであった。

「王丹の正体が私だというのか?」

 巫女はツキヨミに食い下がったが、ツキヨミは淡々とした口調で説明を始めた。

「王丹の正体は・・・・」

「私はいつも日の光を当てているじゃない。私の何が悪いの?」

「お姉、お戯れを。お姉はいつも弟を責めすぎです」

 ツキヨミは日巫女のことを姉と呼んだ。ツキヨミの姉とは、つまり太陽神アマテラスのことであった。弟とはスサノオのことである。ツキヨミは姉のアマテラスに苦言を述べ始めていた。

「それに、人の発言に自分の発言をかぶせないでください。ちょっと失礼ですよ。王丹の正体は責任転嫁です。責任転嫁をするたびに、鬼は強化されていくのです。責任転嫁は、まわりまわって、巨大な鬼の力となって本人の元に帰ってくるのです。私が鏡を見せたのは『自業自得』という意味を伝えたかったからです」

 部屋の奥では、一人の男が大声で泣いていた。男はスサノオだった。

「これは俺のせいじゃない。俺は悪くない。なんでいつも俺のせいにするのか」

 ツキヨミはスサノオをちらりと見たが、姉のアマテラスへの苦言を続けた。

「スサノオを天界から追放したかと思えば、途中で糞尿を食べさせようとするし、地上におりれば、ヤマタノオロチを送り込んで襲ったり、スサノオの子孫が繁栄したかと思えば、その国を譲れと言ったり、弟にきつく当たるのはなんでなんですか?あなたが太陽神だからって、ちょっとやりすぎですよ」

 アマテラスは躊躇せずに反論した

「あなた、肝心な時にいつもいないじゃない。私が岩戸の中に入っていたとき、あなたはどこいってたの?」

「それを、責任転嫁だと言っているのです」

 アマテラスはツキヨミの言葉に怯んだ。

「岩戸の正体は実は私です。私が岩戸に化けて、二人の喧嘩の仲裁のために割って入ったのです。ちょっと閉じ込めて終わりにするはずだったんですが、八百万の神が集まったので気まずくなってしまい、しばらく出られませんでした」

 ここで、ようやくスサノオは泣き止んだが、今度はアマテラスが涙ぐんでいた。

「何なのよ、自業自得って、私以外に太陽神がいないからずっと太陽神やってるんじゃない。そんなこと言うんだったら、ベテルギウスでも崇めればいいじゃないのよ」

「姉さま、私は弟を引き取ります。二人で黄泉の国に行きます。私は月黄泉ですから」

 アマテラス、ツキヨミとスサノオの姉弟喧嘩はいったん収束したのだった。


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