後処理

「…うーん、あれ?ここは?私は何を…」


「お、やっと目覚めたか」


 気絶している彼女を連れて森に入って適当な丸太のところで亡くなってしまっていた、おそらく冒険者らしい人たちの遺品を休憩ついでに整理していると、彼女は目を覚ました。


「…あなたは…、…私は確か、…ってそうだ!!あの悪魔は!?あの悪魔はどこに!?」


 起きてすぐで状況がわかっていない彼女は大慌てしてこの場においては過剰な声量で周りを見て自分の状況を把握しようとする。

 そのため至近距離にいた俺はその大声を間近でくらい、思いっきり頭に響いた。

気絶前の状況が状況だったから仕方ないとはいえ、いきなり叫ばないでほしい。


「…あ、ごめんなさい」


 ぱっと周りを見渡してあの悪魔の気配がしないことに気づきひとまずは安全と分かったのか、彼女は少し冷静になる。

 するとすぐに自分の声が大きいことに気づいたようで、手で口をふさぎながら小声で俺に謝った。

 すぐそういうところに気づいて謝れるのは好感が持てると素直に思った。


「…それで結局あの悪魔はどうなったんですか?周りには見当たらないようですけど、私たちは今どうなっているんですか?私途中から気絶してたっぽくて状況がわかんないんです」


「あー、あの悪魔なら定時退社したよ」


「はい?ていじたいしゃ…?ってなんですか?」


「あー、いやえっと撤退していったってこと」


「あーなるほど、…え?じゃあ、私たちは助かったってことですか!?」


「まあ、そういうことになるな」


「…とても信じられません。ですが、状況的に本当のようですね。…よかった」


 俺がそういうと彼女の肩の力が抜け、大きなため息が出た。死と隣り合わせの状況だったし、本当に緊張していたのだろう。明らかい顔色がよくなった。

 あまり混乱させないために、俺がやったことは一応伏せておいた。


「落ち着いたか?」


「はい、ありがとうございます。…しかし、なんであの悪魔は撤退したのでしょう?私はあの状況から相手が撤退する理由がわかりません。…ていうか、そうだ!!あなた、なんで無事なんですか!?まだ子供なのに棒一本であの悪魔に立ち向かて無傷な理由がわかりません!!」


「おうおう、再燃してるって」


「…あ、ごめんなさい。何度も」


「まあ、これに関しては俺が悪いから何も言えないが、もう心配はしなくていいぞ。結果論だが結局お互い無事で終わったんだから、それで十分じゃないか」


「…確かにそれはそうかもしれません。…ですが、私、聖女でありながら私のために来てくれていた9人も冒険者様たちの命を失ってしまいました。…そして、私だけが生き残ってしまいました」


 彼女からは後悔と悲しみの表情が見える。目の前で自分以外が死んでしまったのが相当ショックなのだろう。

 それに、彼女は自分のことを聖女といった。聖女といえば大体が人を癒す仕事のイメージだし、命を救う役職なのに誰も救えなかったと思うと余計につらいのだろう。


「…今回は相手が悪かったんだよ。大体見た感じみんなほぼ即死だったし、けがの回復とかの次元じゃなかった。まあ、お前が『天命の羽衣てんめいのはごろも』でも使えたら違ったかもだけど、そんなんふつう無理だしな」


「天命の…え?何ですかそれ?初めて聞いたんですけど」


 あ、やべ。つい、いつもの癖で変なこと言っちまった。聖なる神の全体完全蘇生+状態異常含め全回復の技なんて知ってるわけねえのに…


「あーいや、別に独り言だから気にすんな。まあ、ともかくあんま気にしすぎんなよ。」


「…でも」


「…死んでしまったものはもう戻らない、だからお前はそれを後悔するんじゃなくて聖女らしく祈ってあげる方がきっといいと思うぜ。ほら、さっき俺がいろいろ遺品とか集めといたからちゃんと埋葬しよう」


「…そうですね。そうしましょう」


 どうやら俺の言ったことに納得してくれたようで、二人でともに死んだ人たちの埋葬をして、そのお墓の前で祈りをした。

 そのお墓には彼らと彼らが持っていたネームプレートや持ち物が埋められた。

 使えそうなやつ持ち帰るって選択肢もあったのだが、それをするほど俺は落ちぶれてはいない。これでも神だし。

 …にしても、この子結構心強いな。普通のやつだとこうも早く気持ちの整理はつかないもんだし。


「こいつらは幸運だよ。普通冒険者なんて埋葬できないからな」


「…そうですね」


 冒険というのはどこの世界でも危険が伴う、もちろん人によっては命を失ってしまう。でも、死んだとき大体が食べられたり洞窟だったりと遺体の回収不可であることが多いんだ。

 しかしそれは仕方のないこと、どんな冒険者もきっとそれくらいは覚悟しているだろう。


「でさ、話は変わるんだけど。一つお願いを聞いてくれないか?」


「お願い…?」


「俺を街に連れて行ってくれね?旅してたらこの森で迷っちゃって、近くの街の位置がわかんないんだ」


「気づいたら…って!ここがどこかわかってます!?国家が立ち入りを禁止している最大危険区域の『黒の森』ですよ!?あなた自分の言って意味わかってます!?」


 あ、ここそんな場所だったの?そりゃ近くに街ないわ。

 ていうかよくよく考えたら普通にこれ国家の法律破ってるよな。…あれ?これ大丈夫か?


「あーいや知らなかったんだ。ほら地図にもないような村出身だったからさ、常識に疎くて…」


「はぁ、まったく…。わかりました、まあいろいろしてもらいましたし、街へ連れていくぐらいのことぐらいは」


 お、この感じなら訴えられることもなく普通に街に連れて行ってくれそうだ!

 あっぶねー、あたりの転生位置だと思ってたけど想像よりリスク多かったなここ。


「…なにかいうことはないんですか?」


「助かるぅ~」


「…あってるんですけど、その言い方ちょっとむかつきますね」


****


 それから、俺はその少女について行くと、歩いて50分ぐらい離れたところになんと超巨大な門があった。

 上を見上げてもぎりぎり頂上が見えるかどうかぐらいの巨大な門、そしてよく見ると周りには大きな城壁があり森を囲っていた。

 …この門魔力感じるな、てことは結界魔法の類かな?俺の目で見ても結構な性能してるなこの門。


「いやー、こんなのあったんだ…」


「…はあ、やっぱり知らないのですね。本当にどうやってこの森に入ったんですか?」


「…ノーコメントで」


「そうですか。まあ一応軽くこの門について説明しときますね」


「お、頼んだ」


「この門は通称「絶対門」、かつて存在していた英雄たちが作った最強の結界魔法です。この黒の森の生物が外に出ないために作られました。絶対と名前が付くだけあってその耐久も最強で発動されてから1000年この門にひびを入れれた存在はいません」


「なるほどー、確かにこのレベルは俺でも壊すのめんどくさいわ。」


「…あなたやっぱりたまに変なこと言いますね」


「ほっとけ。…それで?どうやって出るの?」


「私がもつ魔石を入り口にかざせば門が開きます」


 はへー、なるほど。そういうのも組み込んであるのか。じゃあ、俺一人だったら壊す羽目になってたのか。はっはは、…あんま笑い事じゃねえな、普通にこの子さまさまだわ。


「じゃ、行きますよ」


 そうして、彼女が空に手をかざすとそこに魔石が出現した。

 それと同時にその魔石は輝き始め、門がゆっくりと上に上昇していった。

 神の世界でもあんま見れないような高度な仕組みにおれは少し興奮した。


***


「おー初めて乗るわ。馬車」


「…馬車乗ったことないってすごいですね。そんな田舎生まれなんですか?」


「そりゃここまでの旅路を歩いてきたぐらいだからな」


「まあ、確かに?」


 それから俺たちは少し歩いたところで馬車に乗せてもらい、街までの道をガタガタゆられながら進んでいっている。


「それで?今向かっている街はどんなところなんだ?」


「ああ、今向かっているのはこの大陸最大の城門都市「万里」です。まあ、簡単に言うなら一番人や施設が多くてにぎわってる都市ですね」


「なるほど、わかりやすい」


「とりあえず、街までは結構時間があるのでしばらく休憩しておいてください」


「あ、じゃあ街につくまでさこの世界のことについていろいろ教えてくれない?」


「…そうですね。まあ、私も暇でしたし、いいですよ」


「助かるぅ~」


「…つぎまたそれ言ったら殴ります」


「…すいません」


 この人思ってたより怖い…。聖女が軽々しく殴るとか言っちゃダメでしょ。

 …あれ?そういや、めっちゃ今更だけど、俺こいつの名前知らなくね?


「なあ、まず先にお互いに自己紹介しないか?普通に忘れてたけど…そういやしてないし。」


「そういえばそうですね。では、私から。…私は「万里」の聖女を務めている、ラミ・ファミエルです。よろしくお願いします」


「俺は、ナタカだ、よろしく」


「ナタカさん、よろしくお願いします」


 かたなを逆さ読みしてなたか、まあ安直だがこれは俺が異世界に行くときによく使う名前だ。それにしても、ラミさんやっぱり思ってたより偉い立場にありそうだな、この人。


 そうして俺とラミさんは握手を交わした。


「じゃあ、あらためてこの世界についていろいろ教えてあげますね」


それから彼女は街につくまでの間この世界のことについて本当に細かくいろいろ教えてくれたのだった。

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