星が導く僕等は。

ライ・スシワシ KKG所属🐾

4月①

誰にだって、真剣になれるものが必ずある。

自分で見つけられなくても、きっと誰かが見つけてくれる。


僕はあの日から、変わったんだ――



桜が舞う入学式。これほど圧巻な光景はあるのかと思える。

でも、僕らは入学式ではなく、進級式に近い。

なぜ入学式と同時に鍼灸機を行うのかと愚痴を入れながら歩く。

今年は中学3年生。受験シーズンに入る。よくテレビに挙げられる時期だ。

受験生頑張れっているやつ。

テスト受けて面接するだけで終わりなのに何を頑張るというのか。

そう思いながら昇降口に張り出されているクラスを確認する。

進級生はクラスの表を見て、慣れた動きでそれぞれのクラスへ移動する。


僕は――3−Aだな。あ、和樹もいる。


教室に入ると、知っている人と話す人もいれば、静かに座っている人もいる。


「あ、おはよう翔陽!」

和樹が元気な声で挨拶してきた。


「うん、おはよう」

僕は和樹だけが聞こえる声で挨拶した。


「今年から受験だぜ?めんどいよな〜」

ついに3年生ならではの会話が出てきた。


「まあそうなんだけどね。この先の将来を決めるのに重要だからな〜」

僕は口ではそう言っているが、本音は違う。真逆だ。


『自分の将来を決めるのに重要だからやらないと!』ではなく、『』の気持ちが強い。

『集中』よりは、『』が強い。

高校に入学して良いところの大学行ったら先の未来なんて考えられるか?

僕は考えることもできない。


小学生の頃はよく夢を想像していた。

宇宙飛行士、学芸員、編集者…どれもこれもがwish願望だ。

憧れるのは昔の子供の特権だが、今では考えられない。

できたらいいな、としか考えていない。叶えることができない。

現実を受け止められる今だからこそ、今の僕がこうなっているんだろう。


今の僕は『受験生』というワードが嫌いだ。反吐が出る。

僕は『特別』という言葉が嫌いだ。誰にだって得意不得意がある。だとしても、自分ひとりだけというのが気に入らない。

年長だからとか男子だからとか、男子なのに、女子なのにとかと一緒だ。

受験は大事だけど、そこまで特別視してほしくない。

僕はそう思っている。


今の学校はほとんど『受験生』が出てくる。先生たちも先生たちだ。僕らはまだ中学生で、生まれてから14、15年しか立ってないひよっこだぞ?


色々考えると、僕は頭がショートしてしまう。

というか、内心思っていることがとても悪くなる。


僕は気持ちを入れ替えようとした。


「なんか良い話題ない?」

「そういえば、今日転校生が来るらしいぞ。それも女子」


耳が早いな、と心のなかで思いつつ、ちょっと興味が出てきた。


「へ〜、どのクラスに来るんだろう?」

「それがこのクラスらしい」


なんとびっくり。このクラスに来るのか。どんな人なのか楽しみだ。

僕はあまり表面では驚いていないが、驚いている。


「座れ〜座れ〜ホームルーム〜始めるぞ〜」


いつの間にか布山先生がいた。担任は去年と変わらずか。


「今日は転校生が来るぞ〜、落ち着けよ〜」


布山先生はいつも呑気で、穏やかな人だ。怒ったところなんて一回も見たことがない。本当に優しい先生だ。まあ、言葉がちょっとゆっくりなのは御愛嬌だけど。とても良い先生だ。


「よ〜し、じゃあ入ってきな〜」


先生は教室の廊下の側に声をかけた。


「はい」


凛とするような声。真面目さが漂う声だ。そうして入ってきたのは、


「はじめまして、北野鈴香です。よろしくお願いします」


僕の偏見かもしれないが、真面目さが第一人称と思える黒髪のロングでメガネを掛けている。

メガネを取ったらだいぶ美人に入るのであろう。

クラス中の男子が目を見開いてみているからだ。僕は例外だが。

眼鏡があることで委員長っぽさは出ている。


「何か〜質問したいこととか〜あるか〜?」

「はいはいはい!!」

「お〜雄二〜」

「彼氏いますか!」


・・・そこかよ!たしかに今は恋愛ブームだけど、流石にそれはないんじゃない?


僕は心のなかでツッコんだ。


「いません。いつかはできたらいいなと思っています」


僕が心のなかで、ヒヤヒヤする中で彼女は真面目に答えた。


僕にはできないな、と心のなかで呟いた。決まっている。僕には彼女ができない。こんな僕を好きになってくれる人など一人もいない。

僕が色々と考えているうちに質問が続いた。


「じゃあ…う〜ん、あ!志望校!志望校はどこにしているんですか!」


彼女は一瞬だけ顔をぴくっと動かしたが、顔ひとつ変えずに真面目に答えた。


「深山高校です」


彼女がそう言うと、クラスがざわついた。

深山高校はここらへんでもかなり頭が良い高校だ。

県内でもトップ3に入っていたはず。


「頭いいんですね!あ、じゃあ終わりにします!ありがとう!」


そう言って雄二は質問を終えた。


「他に〜いないか〜?じゃあ〜終わりにするぞ〜。北野は〜北原の隣でいいか〜」


僕の隣…ではなく一個前だ。前の男子がガッツポーズをしているように見える。

そんなに嬉しかったのか、と僕は思った。

「最後にな〜今さっき出たんだが〜お前たちは〜受験生だ〜。行きたい〜高校に〜入れるように〜努力しな〜以上〜」


布山先生はそれだけ言って教室から出ていった。


僕は布山先生が行ったことに不満を持った。


努力ってどうやるの?僕は何をすればいいの?頼ってばかりいる僕は何をしたらいいの?不真面目な僕には何をすればいいの?


色々がこんがらがり、また頭がショートする。


気がつくと、僕の眼の前にはすごい人集りができていた。転入生が来るとなるとそうだろう。漫画とかはいつもそうだ。隣の北原くんまでも積極的に話しかけている。、今目の前で起こっている出来事もすべてこの年、この学年だから起こることだと判断してしまう。


ふいに、北野さんがこちらを向いてきた。

「よろしくね、北山くん」

「う、うん。よろしくね」

急に声がかかってきたから、僕は渦割った声で返答することしかできなかった。

彼女は僕の返答に満足したのか、はたまた僕から興味をなくしたのかわからないが、他の人に挨拶をしていった。


「よかったじゃん」

和樹がニヤニヤと笑顔になりながら言ってくる。

「何がだよ」

僕はこのあと和樹が何を言うかを予測して、ぶっきらぼうに答えた。

「あの美人の北野さんと話せてだよ」

やっぱり。男子はこういうのには茶化す。僕は嫌だ。

「そんな感情は出会ってすぐに湧くわけ無いだろ」

「それもそうだな」

和樹――崎森和樹も僕の意見をよく聞いてくれる。そして意見を出してくれる。こんな僕に救いの手を差し伸べてくれる。僕の大切な友人だ。


「そういえば、お前『蝶高』気になっていたんだっけ?」


蝶高。蝶ケ崎高等学校。偏差値はまあまあ高めの高校だ。


「うん、そうだけど?」


「あの高校スゴイことになったらしいよ。あの有名な作家やサッカー選手とかが去年、一気に出てきたからとてつもなく人気になるって新聞に載ってたよ」


まじか。僕は心のなかで苦々しく呟いた。


蝶ケ崎高校への志望人数が増えると倍率が高くなり、成績が良くないと入れなくなる。


「ふ〜ん、ところでそっちはどうなの?たしか、ヴェネキア高校の特進科だったよね?大丈夫なの?」


僕は強がるふりをして、質問を変えた。


ヴェネキア高校は偏差値六五の全国的に有名な難関高校だ。

難関高校だが、校舎はきれいで、何よりトイレの設備がとても良い。

行事も多くあり、私服可能だ。

部活も全国行く部活もある。それでいて公立。


深山高校はこれよりちょっとランクが上の高校だ。

こんな良い高校を難関でも目指す人達は多くいるだろう。

毎年の倍率が3倍いくかいかないか、ぐらいは必ずあった。

和樹はその高校を目指している。


「まあぼちぼちやるよ」


こう見えて和樹は天才タイプの人間だと僕は思う。僕は受験のときにこんな言葉を言えるとは思えない。ただ、僕の場合は『無理だな〜』だろう。そういうところがまたすごいと僕は思う。

そしていつもの授業が過ぎて、放課後になった。


「翔陽、部活行こうぜ」

「うん」


僕達は科学部の星空観察グループに所属している。科学部にも色々なグループがあり、科学実験グループ、植物観察グループ、星空観察グループの三つが主として動いている。その他にも色々あるが細々としているため僕もあまり知らない。僕は副班長で和樹が班長だ。この1年でのやることをきめる。星空観察は休日に行い、長期休暇のときは流れ星なんかを見に行ったときもあった。僕は星が好きだ。自分から光を放てている。そんなところが好きになった理由だ。


「あ、先輩たち遅いですよ!」


後輩の二年生の一人、大山千里がもう来ていた。


「悪い」

「ごめん」

「はいはい、謝罪はいいですから、今年はどうするのか決めますよ」


彼女は僕達よりも頼もしい。


「えーと、じゃあ夏休みのはじめと終わり付近に二回見るか。そして、冬休みに一回、あとは俺が気が向いたら連絡する」


「わかりました!予定が決まったら言ってくださいね!」

「わかった」


先輩後輩の関係はとても良好だと言っていい。先生さえいなければタメ口で話すこともできる。僕とは違って…


「先輩?どうしたんですか?」


不意に、彼女が僕の視線に気がついたのか話しかけてきた。


「いや、特には?」


僕はしらばっくれた。


「そうですか…。なんか先輩の視線を感じたような気がしたんですが…気のせいですかね」


鋭い。彼女は視線を読み取れるというのか…すごいな。


「じゃあこれで一時的に解散!」

「「ありがとうございました〜」」


挨拶をして、僕達は一緒に帰った。


「先輩ってどこ高校受けるんすか?」


千里が聞いてきた。後輩として、どこに行くか気になるのだろう。


「一応俺がヴェネキア高校で、翔陽が蝶ケ崎高校だ。一応併願はする予定だけどな」


「……え!?先輩がヴェネキア高校を!?無謀じゃないんですか!?」


本気で驚いていらっしゃる。そこまで驚くか?


「おいてめえ、俺のことを馬鹿にしているのか?喧嘩売ってんなら買ってやるぞ?」


「きゃーコワイ!先輩がいじめてきま〜す!」

「てめっ」


いつもの夫婦漫才が始まった。見てると面白いんだよな。夫婦漫才って。


「はっ!先輩、全く持って違いますからね!」


さすが気配りの上手な後輩ちゃんだ。僕の思っていることがよくわかっていらっしゃる。


「?? よくわからんが、違うからな?」


こっちはよくわかっていないみたいだ。そうだろうな。こいつはイケメンに近いとは思うのに、今まで誰とも付き合ったことはない。告白もされていない。好かれてはいるけど。相手の好感度を上げるけど好意に全く気づいていない。どこの小説の主人公なんだか。


「僕こっちだから、じゃあまた明日〜」

「また明日な」

「また明日です!先輩!」


彼女達と別れ、僕は家路につく。

この《《あと》》のことを考えながら…。

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