第18話

 義理人情の厚い悪魔だ。人間でも直ぐに行動を起こしてくれる者はどれくらいいるか。

「キツいのは確かだけど。それで稼いでくるって……。で、その手段は?」

「デートと言われるものだ」

「デート……?」

 アリソンが言うには、金持ちの女をターゲットに絞り、デートを持ちかけるというものだった。しかし、アリソンから声を掛けるまでもなく、向こうから寄ってきたという。

 アリソンに声を掛けるなど、余程の金持ちか自信家だけだろう。こんな完璧な見た目をした男など、普通の感覚を持つ人間なら到底声などかけられない。

 そして引っかかったと言うべきか、その女性はやはりかなりの金持ちだったようで、一緒に食事するだけで二百万出すと言ったようだ。

 アリソン自身ではそれを断る理由がなかったが、美風の金銭感覚を知っているため、それは断ってくれたらしい。だが女性はそれが不満だったようで、その代わりにスーツや財布を与えたという。

「それってママ活とか姉活とか言われてるやつと変わらないじゃん。本当に食事だけなのか?」

 じろりとアリソンを軽く睨む。当のアリソンは何か嫌なことを思い出したのか、僅かに顔をしかめた。

「生気を少しもらった」

「生気? 生気ってまさか……」

 昨日美風がされたように女性にキスをしたと言うのか。少しとアリソンが言っているために完全に吸い取ってはいないのだろうが。女性が一人犠牲になってしまった。

「キスをしただけだ。セックスをすれば、相手のエナジーが高まって、より多く補給出来るがな。何にせよ、あの女は不味かった」

 見当違いの返事に眉が寄るが、生気に美味いも不味いもあるのかと少し気になった。それにセックスだとか凄い事を言っているが、美風はそれよりもある疑問が湧いた。

「アリソン、もしかして生気を定期的に補わないとダメなのか?」

「あぁ、そのようだな。ある程度の魔力を保っていないと、身体がかなり怠くなる」

「そうなんだ……」

 だからと言って、夜な夜な生気の補給にアリソンを外に送り出すことは出来ない。万が一吸いすぎてしまうとも限らない。

「アリソン、今後お金を稼ぐことはしなくていい。その気持ちはすげぇ嬉しいし感謝もしてる。でも、いくらお金を持ってる人からとは言え、そういうお金の稼ぎ方はオレは感心しない。それからそのお金は本当は返したいところだけど、返そうったってきっと女性のプライドを傷付ける事になるだろうな……探すのも大変だし。だから今回は返さなくていいと思うけど、もうやめてくれ。それと生気のことだけど……」

 アリソンの顔を真正面に、美風はゴクリと緊張で唾を飲んだ。

「生気はオレから取ればいい。だから他の人間から取る真似はしないでくれ」

 そう伝えると、アリソンの表情がみるみると綻んでいく。

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