第26話 歪んだ歓迎
優子は震える手で写真を握りしめ、全身に冷や汗が流れるのを感じた。
「また……これ……」
箱に添えられていたメモには、たった一言、 「おかえり、優子。」 と書かれていた。
言葉の意味は単純なのに、その響きには底知れない悪意が感じられる。優子はその場にへたり込み、息が荒くなるのを抑えられなかった。
「もう耐えられない……」
優子は写真とメモをビニール袋に詰めると、ゴミ箱に放り投げた。これ以上この部屋で一人でいるのは危険だと感じた。だが、どこへ行けばいいのかも分からない。
ふと、部屋の隅に置いてあるモモの小さなベッドに目が行った。
「モモ……どうして……」
涙があふれ、声にならない叫びが喉を詰まらせた。
しかしその瞬間、ふいに背後で何かが動く気配を感じた。
振り向くと、そこには何もない。ただの静まり返った薄暗い部屋が広がるだけだった。
「気のせい……?」
優子は恐る恐る立ち上がり、部屋の中を見渡した。だが、どこを見ても何もおかしな点はない。ただし、微かな異臭が鼻をついた。それは昨夜警察が指摘した腐臭に似ているような気がした。
「……一体どこから……?」
部屋を探索する中で、冷蔵庫の下に何かが詰まっていることに気づいた。優子は震える手でそれを取り出そうとしたが、どうしても触れる勇気が出なかった。
その時、インターホンが鳴り響いた。
「……だ、誰?」
優子は恐る恐る玄関に向かい、モニターを確認した。そこには見知らぬ女性が立っていた。
「こんにちは。田中優子さんですか?」
優子は警戒しながらもドアを少しだけ開けた。
「はい……あなたは?」
「警察の者です。ちょっとお話を伺いたくて。」
警察――その言葉に優子はさらに緊張した。
「何の用ですか?」
「実は、最近この近辺で起きた事件に関連して、あなたに確認したいことがありまして。」
優子はその場で固まった。
「……私には何も関係ありません。」
「ええ、それを確認するだけです。少しだけお時間をいただけませんか?」
彼女は仕方なくドアを開け、警察官を招き入れた。
「こちらで最近、不審な物音や出来事などはありませんか?」
「……特に……」
優子は視線を泳がせながら答えた。だが、その言葉には力がなかった。
「そうですか。ただ、念のためご注意ください。この近辺ではまだ事件の捜査が続いています。何か気になることがあればすぐにご連絡を。」
「……わかりました。」
警察官が去った後、優子は再び部屋の異臭に気づいた。
「どうして……この匂い……」
再び冷蔵庫の下を覗き込むと、そこには黒ずんだ袋のようなものがあった。優子は震える手でそれを掴み、引き出した。袋を開けると、そこには何かの肉片のようなものが詰まっていた。
「何これ……どうして……」
優子は叫び出しそうになるのを必死で堪えた。その瞬間、またしてもインターホンが鳴り響いた。
「……誰……?」
モニターを確認すると、そこには佐藤が立っていた。
「田中さん、ちょっとお話があります。」
その声にはいつも通りの穏やかさがあったが、優子の中には何かが引っかかった。
「……今はちょっと……」
答えた瞬間、モニターの画面が突然消えた。
「え……?」
恐怖心に駆られた優子は玄関の鍵を再び確認し、しっかりと閉め直した。その後、ベッドに潜り込むが、心臓の鼓動が収まる気配はなかった。
その夜、夢うつつの中で、彼女は誰かに名前を呼ばれる声を聞いた。
「優子……」
目を開けると、天井に何かが動いているような気配がした。彼女は布団の中で身を縮め、祈るように目を閉じた。
「お願い……もうやめて……」
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