願望と人生

幸せとは何か

前編 産まれと歪み

 今にも雨が降りそうな曇り空、身体は動かず私は思う。


「ああ、何の為に産まれたんだっけ」


古びた家の中泣き叫ぶ女の子が見える。


「助けてー!止めてよお父さん!」

「...」


六歳だっただろうか、物心ついた時には母は亡くなり、父から襲われる日々が始まったのだ。


「痛いよ...痛いよ...」

「...」


父は黙っていつもやることをやって近くに座り酒を飲む、私は端で血を流しながらすすり泣いていた、それが私の一番最初の記憶。

そんな日常がしばらく続いたある日、私は酒代の代わりに父に売られることとなる。

家から連れ出される時、最後に父を見た時の姿は頬はやつれ、皮膚の所々が腐り、腹は出ていた、今思い返してみれば数日の命だったのだろう。

私は無抵抗のまま通りの人身売買へ売りに出された、抵抗する気力も無いが抵抗する気も無かった。


「まあまあだね、この子を買わせてもらうよ」

「いつもありがとうございます」

「これも商売さ」


売られてから数日後私はずっとくそばばあと思っていた人物に買われる事になる、女の子の買われる先は大概決まっていて、大人になったら想像に容易いが夜の店、に行く事になる。

最初は子供なので知らなかったが店の外観は大概は見れば分かるような夜のお店では無く、飲食店やマッサージ店の様な外観な事が多い、理由は男がバレたくないかららしく、姉様方から聞いて馬鹿馬鹿しいと思った。

店に着くとおばさんから名前を聞かれた。


「分からない」

「まあそうだろうね、呼び名が無いのは困るからね、お前は今日からりんかだ」

「りんか?」


こうして雑にばばあから名前を付けられた私だったが、この後が大変だった。

井戸へ案内され、井戸水を身体にかけ布で身体を拭き、部屋へ入ると着替えをする前に身体を点検された、当然の如く股を開かされて陰部をチェックされるが、私の心境は寒いから早くして欲しいだった。


「予想通りダメだね、炎症は起きてるし処女でもない、まあある程度になったら処女と言って高値につり上げるかねぇ」


こうして新しい暮らしが始まった。

意外にも住む場所は店とは別の場所にあり、理由としては店の営業時間以外で会いに来る男が居るからだとか。


「新入りのりんかだ、お前に任せるよ」

「はい」

「忙しいからもう行くよ」


手を引かれ廊下の奥へと連れて行かれる、歩いていき部屋へ入ると狭い部屋でぎゅうぎゅうな状態で私くらいの子達が寝ていた。

担当をまかされた人が新人と一緒に寝る事になるそうだ、時間も無いので耳元ではやく寝るよと言われ、足で人を踏まないように気をつけながら布団へ行くとそのまま会話もせずに寝てしまった。


「むにゃむにゃ」

「早く起きなさい!」


叩かれて起きると外は夕暮れ時、他の子達は起き布団を押し入れにしまっているところだった。

夜の店のなの通り夜からが活動時間なので、当然夕方には起きて店の営業準備をしなければならない、初日なので何も分からない私だったが言われた通りに布団を畳んでしまい、急いで着替えて店に向かう事になった。


「りんかほら挨拶!おはようございますゆうかお姉様!」

「おはようございます」

「おはよう、らいか新しい子?」

「そうです!ゆうかお姉様!」

「そうなのね、頑張ってね」


店だと慣れないけどとりあえず挨拶をしないといけないらしい、廊下を進み、らいかが挨拶していくのに合わせて、挨拶をしていく。


「りんか、もう少し大きな声出してね?後名前全員覚えて分かった?」

「はい」

「らいかじゃない、早くあっち行きなさいよ」

「おはようございます!まゆみお姉様!失礼しました!」

「なら早く仕事場行ってもらえる?」

「すみません!」


駆け足で手を引っ張られながら作業場に着いたみたいだ。


「はあ危なかった、まゆみお姉様怖いから気をつけてね?」

「...」

「もう少し何か喋りなさいよ!他の子もそんな感じだからしょうがないか、今からお風呂沸かす作業を手伝って貰うから見てて!」


お風呂?と疑問に思いつつも説明を聞きながらある程度やるべき事を理解した、作業をしているとらいかから話しかけられる。


「何で貴方はここへ来たの?」

「売られたから」

「私と一緒ね」

「そう」

「私ね、両親とも亡くなったのそれで買われて仕事してる、でもねゆうかお姉様みたいになりたくて頑張ってるの」


らいかからのお喋りは一方的に続いた、この時は子供だから知らなかったこの会話が出来るのは幸せだった事、らいかの夢がとても残酷で悲惨な事を。


「りんかの事も教えてよ」

「私は...」


私は全てをあった通りに話した話しているうちに何故か涙が出て止まらなかった、そう私の中では父からやられてきた事はずっとずっと苦しくてでも吐き出せなくて辛い事で。


「りんかが聞いてごめんね...」

「いいよ、大丈夫だから」


らいかが作業を放り出して抱きしてきて私は余計に泣きだしてしまった、その声が他のお姉様に聞こえたらしくらいかと私は怒られる事にはなったけど初日から仲良くなったのだった。

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