月宗派VS太陽宗派
@Takomikan
第1章:月宗派の誕生とその理念
月が満ちる静かな夜、大地を照らすその光は、神秘と畏怖を人々にもたらした。古代から続くこの光に、人々は命の源や運命の巡りを見いだし、それがやがて一つの信仰体系として結実した。それが「月宗派」の始まりだった。
月宗派は、当初は自然崇拝の一形態として成立したが、次第に体系化され、より多くの信徒を集める存在へと成長していった。その中心に立つのが、卓越したカリスマ性と知恵を持つ指導者、**米空 雄真家(べいそら おまいえ)**であった。
雄真家は幼少のころから星空を見上げ、自然の法則と月の変化に強い関心を抱いていた。彼の家系は、代々天文学と哲学に通じた一族であり、その知識をもとに、彼は月の周期と人々の暮らしに密接な関係があることを見抜いた。月の満ち欠けが農業や狩猟、さらには人の感情や行動に影響を及ぼすことを理解した雄真家は、それを信仰に昇華させることで人々を導くことを決意する。
「月はただの光ではない。我々を守り、導く存在だ」
雄真家のこの言葉は、人々の心に深く響いた。月宗派は、月の周期を元にした独自の暦を用いて、収穫祭や祈りの日を設定した。それによって、生活の指針を失った人々が新たな希望を見いだすようになったのだ。
やがて雄真家は、「月神」を信仰の中心に据えた教義を整備する。この教義は、調和と静謐を重視し、夜の静けさが人々に安息をもたらすと説いた。また、月光を神聖なエネルギーと見なし、儀式や祈りの中核とした。この理念は、人々に安心感と共に、次第に強固な忠誠心を生み出していく。
しかし、月宗派の拡大と共に、他の信仰体系との軋轢が生じるようになる。特に問題となったのは、「昼の光」を神聖視する勢力との対立であった。月の信仰が広がるほどに、昼の信仰を持つ者たちから反発が起こり、やがて月宗派は自らを守る必要性を感じ始める。
そのため、雄真家は信仰を強化するだけでなく、武装集団を組織し始めた。彼はこう語った。
「月の光は静かに我々を守る。だがその光を消そうとする者には、闇の中での戦いも辞さない」
こうして、月宗派は信仰と防衛の二つを柱とする勢力へと変貌を遂げる。これが、後に太陽宗派との長き戦いの端緒となるのであった。
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