しずかちゃんが入浴中のお風呂場にワープして来たんだが
お小遣い月3万
第1話 しずかちゃんがお風呂場に
俺が湯船に入っているとピンクレンジャーみたいな戦闘服を着た謎の女の子が風呂場に突然と現れた。
チン毛が生え揃ったばかりの股間を両手で隠して、「な、な、な、な」と口をあわあわさせて、急に風呂場に現れた傷だらけの女の子を見た。
彼女がしずかちゃんであることがわかったのは落ち着いてじっくり見てからだった。じっくり見たせいで服が破れて、オから始まってイで終わる部位が見えそうになっているのがわかって目を逸らす。
きゃーしずかちゃんのエッチ、と俺は叫ぶことはなかったし、そもそも彼女はしずかちゃんというあだ名であって、本名はしずかちゃんじゃない。
彼女の名前は佐々木優衣。誰とも喋らず、いつも静かだから、しずかちゃんとクラスメイト達から呼ばれていた。
しずかちゃんは特殊戦闘員ということもあって、クラスからは浮いた存在だった。
「佐々木さん?」
と俺は呼びかけた。
返事はしない。
いつもみたいに無視を決め込んでいるんだろうか? ドキドキしながら佐々木さんを見る。やっぱり戦闘服が破れてセクシーになっていて、……こんな訳のわかんねぇー状態なのに、俺の下半身が戦闘モードに入りそうになる。だけど彼女の息がないんじゃねぇーの? と思ったら下半身の戦闘モードが解除される。顔を近づけて息をしてるか確認する。
「し、死んでる?」と俺は湯船から立ち上がった。
うっ、うぅー、としずかちゃんから声が聞こえて、うわー生きてるじゃん、と俺は浴槽に浸かりなおす。
「佐々木さん?」
もう一度、声をかけど返事はない。
いつもみたいに無視を決め込んでいるわけじゃなくて、気絶しているみたいだった。
俺はソッと湯船を出て、体を拭いてパジャマに着替える。
しずかちゃんをどうしよう? 母親に伝えるべきか? お母さんに言ったら学校に報告するだろう。報告したらしずかちゃんは政府が引き取りに来て、また戦いに向かうかもしれない。こんな傷だらけで? 傷を治す能力を持った戦闘員がいるかもしれない。傷は瞬時に治って彼女はまた戦闘に向かうかもしれない。
だけど傷だらけのしずかちゃんを見て、それは可哀想だな、と俺は思った。休ませてあげたい、と俺は思ったのだ。
ピンクレンジャーみたいなピチッとした戦闘服は、彼女の体のラインをハッキリさせた。
胸、腰、太もも、エッチだ、と思ったけど、傷だらけの女の子に対して、そんなやましい事を思うのは不謹慎な気がして、できる限り彼女の体を見ないように心がけたけど、やっぱり見てしまうごめん。
洗い場に彼女が出現したせいで、ちょっとだけしずかちゃんは濡れていて、お姫様抱っこをして持ち上げたら俺のパジャマまで濡れてしまった。
俺に女の子を持ち上げられる力はあるのか不安だったけど、毎日腕立て伏せを100回しているおかげで、なんとかしずかちゃんを持ち上げることができた。それに彼女は軽いし柔らかい。
しずかちゃんをお姫様抱っこしたまま、風呂場を出て、お母さんにバレないように俺の部屋がある2階に上がった。
そして彼女をベッドに寝かせて、布団をかけた。
しずかちゃんは、美しかった。
二重で、少し厚い唇、サラサラの黒い髪。
高校入学当初は、よく男子生徒に声をかけられていたけど言葉すら返してくれないことがわかると、誰も彼女と喋らなくなった。
「あの子、特殊戦闘員だって」
とクラスメイトの男子が喋っているのを思い出す。
しかも彼女のすぐ近くで喋っていた。
「特殊戦闘員って、あの俺すげぇーと思っている集団?」
「しずかちゃんは高嶺の花子さんを気取ってんだ」
「俺はあんな奴、無理」
「お前、声かけてたんじゃん」
「私すげぇーと思っている高嶺の花子さんと思ってなかったもん」
たぶん相手にされなかった腹いせで、そんな事を言ったんだと思う。
ちなみに特殊戦闘員は俺すげぇー、と思っている集団ではない。
たまたま未来の人間から能力を与えられてしまった人間である。
俺の兄も特殊戦闘員だった。兄は、もうこの世にはいない。兄に与えられた能力は、そこにいるけど存在を認識されない能力だった。
そもそも能力について説明する前に、今現在起きている戦争について語らないといけないだろう。
特殊な能力を持った人間が急に現れるようになって、国から色んなことを優遇されるようになって給料まで貰って、ナニカと戦っている。
そのナニカというのが未来のロボットだった。
間抜けな小学生の相棒になるような可愛い猫型ロボットじゃなくて、人をじゃんじゃんと殺戮する人型ロボットが、2023年のある日にタイムスリップして来た。
ソレは世界を支配しようとした。そして今も世界を支配しようとしている。
未来では、人間は人間よりも賢いロボットを作り出してしまったのだ。
賢い者が、バカに支配される道理はない。
人間からすれば作ったのは俺達なんだから言うとこ聞け。でもある時期からロボットはロボットが開発するようになって、何倍も賢くなって、人間を支配しようとするらしい。
だけど人間はロボットに対抗するモノを作り出し、なんとか未来では均衡が取れているらしい。
らしい、というのは、どこかの教授か博士か誰かが、色んなことを読み取って未来を推測しているだけだからである。
賢いロボットはタイムマシーンを作り出し、過去に来て世界を支配しようとした。
それが2023年のある日のことだった。
ロボットとの戦争は、現在の時点で1年以上続いている。
この時代にやって来たロボットは、別のロボットを作り出した。
それに抗うように、日本では能力を持った人間が出現するようになった。
未来の人間はタイムマシーンを作り出すことは出来なかったけど、未来の科学を過去の人間に移植することに成功したらしい。それが能力だった。
俺の兄は世界を守るために戦って、死んだ。
しずかちゃんも世界を守っている。
俺にできることは、せいぜい彼女が授業を受けていない時のノートを見せてあげたり、クラスの連絡を回したり、彼女の担当である委員を彼女がいない時に代わりにやってあげたりすることだけだった。
何かを彼女にしてあげても、何のお礼も言われなかったし、……そもそも彼女の声すらも聞いたこともない。
それでも世界を守っている人の支えになるなら、と思って、俺は彼女をサポートし続けた。純粋に世界を救う彼女を尊敬していたんだ。……もっと言えば俺はお兄ちゃんを尊敬していたんだ。
ベッドに眠るしずかちゃん。
尊敬していると思っているのに、俺は彼女が眠る布団の中にゆっくりと手を入れる。そうです私が変なおじさんです、と志村けんのコントのセリフが頭に流れる。俺は何をしようとしてるんだろう? 疑問を抱かなくても、愚かな自分がやろうとしているこたはわかっているごめん。彼女の柔らかい部分に触ろうとしていた。
布団の中で彼女に触れる。そしてしずかちゃんの頂に向かって手を伸ばしていく。
「うっー」
としずかちゃんがうねった。
やべぇー、起きてしまう。
俺は咄嗟に手を引っ込めた。
それから彼女の顔を伺う。
瞼がピクピクも動き、ゆっくりと瞼が開いた。
目覚めていいんだけど、ちょっとエッチなことをしようとしてたから、「うわっ」と俺は叫んで、尻餅をついてしまった。
ベッドの上でしずかちゃんが目覚めて、辺りを見渡す。
「起きた?」
と俺は床に尻餅をついたまま尋ねた。
「長谷川くん?」
と彼女が尋ねた。
まさか返事が返って来るなんて思ってもなくて、俺は「喋れるんだ」と驚いてしまった。
キリッとした美人さんだから冷たい系の声と思っていたけど意外と優しい声だった。
「……ごめん。喋れる」
としずかちゃんが言った。
いや、もうしずかちゃんじゃない。喋れる子ちゃんだ。喋れる子ちゃん、ってなんだ?
変なおじさんモードは終わり、切り替えて彼女に向き合った。
「どうしてココに私はいるの?」
としずかちゃん改め、佐々木さんが尋ねた。
「佐々木さんが俺の風呂場に突然現れたんだ」
「長谷川くんの風呂場に?」
と彼女は少し震える声を出して、顔を真っ赤にした。なんで佐々木さんが照れてるんだ?
「お風呂に入っている最中だった」
言わなくていいのに、俺は追い討ちをかけるように言った。
照れている佐々木さんが新鮮で、喋っている佐々木さんが新鮮で、もっと照れてほしいと思ったし、もっと喋ってほしいと思った。変なおじさんモードが抜け切れてない。
「そう」
と彼女は言って、ベッドに潜った。
「このベッドは?」
と布団の中から篭った声が聞こえた。
「俺のベッド」
と俺は返事をした。
急にベッドの膨らみが無くなり、恐る恐る布団を触ってみたけど、そこに人がいる感触がなくて、布団を捲ると、すでに佐々木さんは消えていた。
どこかにワープしてしまったんだろう。
彼女の能力はワープだということはわかった。
だけど、どうして俺のところに現れたんだろうか?
もっと彼女と喋りたかった。もっと彼女に休んでほしかった。
もっと彼女に……。
俺のやましい気持ちがバレたんだろうか?
次の更新予定
しずかちゃんが入浴中のお風呂場にワープして来たんだが お小遣い月3万 @kikakutujimoto
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