第六話 分かれ道

戦闘が激化する中、革新連と琉解軍の部隊は、敵の包囲網を突破しようと必死だった。だが、中国軍の戦力は圧倒的であり、次第に弾薬も尽き始める。島袋と片山は奮闘しながらも、全員の表情には焦りが滲んでいた。


「これ以上は無理だ……。」南条が無線機を握りしめ、血に濡れた手で再び調整を試みた。無線はほとんど雑音しか返さない。


だが、次の瞬間、無線機に微かな声が響いた。


「こちら、琉球解放同盟軍本隊――聞こえるか?」


南条の目が見開かれる。「……本隊だ!知花司令か?」


「その通りだ。状況を報告せよ!」通信機の向こうから冷静で毅然とした女性の声が響く。それは知花亜里沙司令のものだった。


「司令、敵に包囲されています。応援が必要です!」南城は叫ぶように応答した。


「了解。すでに増援部隊が接近中だ。今から5分以内に到着するだろう。それまで持ちこたえろ。」知花の声は揺るぎないもので、そこに確かな希望が込められていた。



やがて、遠くの海から何隻もの小型船が走ってくる。琉解軍の増援部隊が到着したのだ。増援部隊の数は圧倒的で、中国軍の動きが鈍り、彼らの勢力は次第に崩れ始める。


「行くぞ……!」島袋が叫び、敵陣に向かってさらに突撃する。彼の背後を琉解軍の増援部隊が次々と追っていく。


知花司令自身も、戦闘服をまとい、部隊を率いて前線に現れた。彼女は短銃を手に持ち、冷静な判断で部隊を指揮しながら次々と命令を飛ばしていく。


「前進!包囲網を崩すぞ!」知花は全員に向かって叫び、部隊を再編成する。彼女の登場は、戦闘の流れを完全に変えた。



琉解軍と革新連の共闘により、中国軍の勢力はついに島から撤退を余儀なくされた。



中国軍を退けた翌朝、琉球解放軍と革新連は洞窟内でこれからの方針を話し合っていた。しかし、次第にその場は険悪な空気に包まれていく。知花司令の冷たい視線が片山達に向けられた。


「革新連が目指しているのは琉球のためではない。ただ自分たちの思想をこの地に押し付けようとしているだけだ。」

亜里沙の声には鋭い刺があり、その言葉に部屋の空気が一層張り詰めた。


片山はその言葉に挑発されるように言い返した。「押し付け?それは誤解だ。私たちが目指すのは沖縄を資本主義の搾取から解放し、平等を実現する未来だ。それがこの地の人々にとって最良の選択だと信じている。」


「信じるのは勝手だが、その道は琉球の誇りを踏みにじるものだ。」

知花は一歩も引かない態度を見せた。「琉球の独立は、琉球の人々自身の手で成し遂げるべきだ。他国や外部の思想に依存することは、結局また別の支配を招くだけだ。」


片山は苛立ちながら言った。「現実を見ろ!理想だけでこの島が守れると思うのか?強い体制と理念がなければ、外部の圧力に飲み込まれるだけだ!」


知花は冷ややかに笑みを浮かべた。「現実を見るべきなのはあなたたちだ。あなたたちが掲げる共産主義の未来など、琉球に必要ない。むしろ害になる。」


南条は言い争いを止めようとしたが、両者の間に流れる緊張感を和らげることはできなかった。やがて、知花は溜息をつきながら言葉を切り出した。

「これ以上話しても無駄ね。あなたたちの目指す未来に私たち琉解軍が関わることはできない。この島を去り、自分たちのやり方で進んでほしい。」



その日の午後、革新連は新たな拠点を求めて島を去る準備を始めた。知花亜里沙司令は洞窟の入口から彼らの様子を見つめていたが、表情には一切の未練もなかった。


船に乗り込む前、片山は知花に最後の言葉を投げかけた。「いずれ分かる時が来るだろう。我々の道が正しい選択だったと。お前たちがその時にどうするのか、見させてもらう。」


知花は冷静な声で答えた。「その時が来ても、私たちは琉球解放同盟軍として琉球人の意思を守り抜く。それが、あなたたちとは違う私たちの戦い方だ。」


そのやり取りを聞いていた島袋が一歩前に出た。

「片山さん、あなたたちの力を認めるが、その信念は受け入れられない。次に会う時、我々は同じ戦場に立つとは限らない。敵として剣を交える日が来るかもしれないと覚悟しておけ。」


片山はその言葉に少し驚いたようだったが、すぐに険しい表情を浮かべた。「ならばその時を楽しみにしておく。俺たちが信じる革命のために、戦う覚悟はできている。」


一方、滝沢が片山に近づき、低い声で言った。

「片山さん、やつらとはもう交わる必要は無い。俺たちは俺たちの道を行く。それだけだです。はやく行きましょう。」


片山は滝沢の言葉に軽く頷き、再び前を向いた。


南条が船の甲板から振り返り、静かに知花に言った。「知花さん、玉袋さん、どうか無事でいてください。そして、いつかまた……。」

だが知花は南城の言葉に頷くことなく、毅然とした態度で背を向けた。島袋は表情を緩めることなく、美奈に短く頷いただけだった。



革新連の船が遠ざかる中、琉解軍の旗が風に翻っていた。思想の違いが明確になったことで、両陣営は互いの道を進む覚悟を決めた。


革新連は共産主義国家としての沖縄独立を目指し、新たな仲間を募りながら計画を練り直す。一方、琉球解放同盟軍はこの島を独立運動の拠点とし、琉球人自身の力で自由を勝ち取るための戦いを続ける。


嵐の中で一度交わった運命の糸は再び分かれた。しかし、それぞれの胸に宿る信念はどちらも揺るぎないものだった。


水平線の向こうで、再び両者が出会う時が来るのか。それは未来が明らかにするだろう。今はただ、海風がそれぞれの道へ送り出していた。



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