第5章 8 サラ 大和 洋子
皆が離れていったベンチに腰かけて、サラは空のビンを片手に、ビー玉をカラカラと鳴らしていた。
「いやぁ、皆元気だねぇ」
「せやなぁ。最も、一番の子供さんは大人しいけど」
相槌をしながら尻尾を大和に巻きつかせて頭を叩き、微笑む洋子。そんな事をされても大和は意に返さず、巻きついている尻尾を優しく撫でる。
「今回、僕はお前の監視役でもあるからな、離れるつもりはない」
山を造ったり、水のかけ合いをしている歳上をまっすぐ眺めながら、大和は言い切る。
そんな大和へ、栓を抜いたばかりの瓶サイダーを渡すサラ。
「とかなんとか言って、皆の水着姿を眺めていたいだけだったりして」
からかいながら瓶サイダーを手渡すが、大和の表情は崩れない。
「皆さんの水着や下着姿になびく『まとも』な感性をしていたら、こいつと結婚の約束なんてしてませんよ」
これまた平然と言い切り、受け取った瓶サイダーを飲んでいく大和。
「付き合ってるのは知ってたけど、結婚の約束もしてんだ」
「軽い気持ちでは付き合いません」
「なぁるほどね……流石だね大和くん」
「何がですか?」
「いや、こうやって大和くんが好きだって言葉に出しまくってるのに、洋子さんは照れた様子もないからさ。気取ってるとかじゃなくて、そうやって普段から真っ直ぐに愛を伝えてたんだなぁって、感心したわけよ」
サラの発言を受け、大和は澄まし顔の洋子を見上げて、またサラを見る。
「こいつ、照れてますよ」
大和の言葉に洋子がピクッと反応した。
「え!?マジ?」
「はい。口元がいつも通り緩んでます。この尻尾も僕が皆さんの素肌に惹かれて、浮気をしないようにっていう嫉妬心から巻きついてきているモノで、もご」
大和の口が尻尾に塞がれる。
「そこまでやで大和はん!ウチはカナタ家の最年長なんや!恥ずかしい姿を解説するんやない!」
ペチペチと尻尾で大和の頭を叩き、猛抗議する洋子。
そんな彼女を、サラはニヤリと笑った。
「そうだったんですね~洋子さん。可愛らしい所あるんですね~。乙女ですね~」
「なんやそのニヤケ面!」
「いやいえ、親近感が沸いただけですって、洋子さんって達観した考えをしてたりするから、しっかり者だなって思ってたんですけどね。ははぁ~大和くんが弱点な辺りが、流石我が家のメンバーですね」
「うぅ……サラはんには、わからんへんのや、年頃の彼氏が肉付きの良い水着姿のお姉さん達に囲まれてる環境がどれほど不安なんかが」
「言われちゃった。まあ確かに不安ですよね。皆スタイルも顔も性格も良いし、大和くんが言うような『まとも』な感性の男の子なら直視できないでしょうね。そんな状況であんなこと言ってくれたら嬉しくなっちゃいますよね~」
「う、ぅうるさい!」
噛みつく勢いで怒られたサラ。
そして洋子は、尻尾の上から大和に抱きついた。
「なんならサラはんが一番の注意人物なんやからな!」
「うえぇ!?アタシ?」
「ウチらの中で一番胸が大きいし、元気な性格で距離感も近い大人のお姉さん。お子様には劇物や!」
「劇物って…」
「大和はんは渡さんで!」
キッ!と糸目を更に細くして睨み付け、大和をサラから隠すように抱く。
なんだか様子がおかしい洋子さん。どうしたのだろうと考えていると、大和くんが尻尾を柔らかく退けて話し出す。
「いらん気を回すなお前は」
「ほなって!」
「はいはい。ちょっと屈め」
大和くんは手招きをして洋子さんに頭を下げるように促す。そして、頭を下げてきたら、あやす様に撫でだした。
「あふぅ…大和はん……」
途端に洋子さんは脱力する。
「落ち着くだろ」
「うん……ええ気持ちや…」
先程の剣幕は何処へやら、洋子さんは飼われた動物の如く、リラックスしていた。
それを眺めていると、大和くんがこちらを向く。
「僕達、家の都合で出来るだけ会わないようにしているのは知ってます?」
「へ?ああうん知ってる。洋子さんが安全だって証明する為だとかなんだとか」
「そうなんです。力で縛られていなくても害のない存在だと示さなければならないんです。故に簡単には会えません」
「大変だよね」
「ええ、ですから、今回みたいに数日間一緒に居られる事が嬉しすぎて、ちょっと心が高ぶってるんですよ」
「納得。そりゃあテンション上がって周りを気にするよね」
「可愛いでしょ?」
「言うねぇ」
大和くんの話を聞き、スッゴい歳上だけど洋子さんも恋する乙女なんだと改めて実感する。
いや、スッゴい歳上だからこそ色んな恋愛をしてきてて、大和くんみたいな真っ直ぐなタイプに弱いのだろうか?
幸せそうに顔が緩み、耳を寝かせている洋子さんを見て、不意に、どんな過去があるのかなんて聞いたこともなかったなと思い、この一時は洋子さんにとって幸せすぎる時間なのではないか。なんて考えが過った。
「考えすぎかな」
「どうかしました?」
「なんでもな、」
「オーーーーノーーーーー!マイキングダーーーーム!」
突然砂浜から悲鳴が飛んできた。
「なんでしょう?」
「ふふ、旦那がアタシを呼んでんのよ」
「それはそれは、早く行かなければなりませんね」
「おう。行ってくるわ」
アタシはベンチを離れ、歩んでいく。
「どうしたのぉ、王国崩壊でもした?」
熱せられた砂を踏み、面白いことが起こってるぞとニヤケながら声を張った。
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