第40話 作戦会議です!!
『――というわけで敵さんも本気になってマオさんを探し始めます』
『どういうわけ!?』
家に帰ったマオはハルナが夕食の準備を行う中、自分の部屋でアイリスからスラム街を牛耳る組織が本格的に動き出したことを聞かされた。しかも組織の長が自分やバクと同じ魔法使いだと聞かされ、そんな相手を敵に回したことにマオは頭を抱える。
「絶対にまずいでしょそれ!!こうなったら他の街に引っ越しするしか……」
『落ち着いてください。まだ慌てる時間じゃありません』
『どっかできいたセリフだな……』
焦るマオに対してアイリスは冷静に現在の街の状況を説明した。
『マオさんの活躍でスラム街に潜んでいた凶悪犯罪者を数名捕まえることができました。残った敵組織の幹部に関しても今のマオさんが苦戦するような相手はいません』
『そ、そうなの?』
『強いて言えば組織の首領を務める男は曲者です。実力は今のバクと互角と考えた方がいいでしょう』
『師匠と互角!?そんなの勝ってこないよ!!』
自分に魔法を授けてくれたバクと同格の相手などマオは勝てる気がしなかったが、アイリスによれば作戦を立てて挑めば十分に勝機はあると判断していた。
『大丈夫ですよ。相手は強敵ですがマオさんには私がいますから』
『……そもそもアイリスのせいで今の状況に陥ったような気がするんだけど』
『でも、私の助言のお陰で何度も命拾いしたでしょう?それにこの街の住民がスラム街の犯罪者に苦しめられているのは事実です。この機会に犯罪者集団を叩きのめせば街の平和に貢献したことになりますよ』
『ぐぬぬっ……口が上手いんだから』
マオは自分が世話になっている街の人間を見捨てて逃げることはできず、アイリスの情報を頼りに敵組織の首領と戦う作戦を立てる。
『まずは邪魔な幹部を排除していきましょう。スラム街の幹部の拠点を教えますのでしっかり覚えてください』
『おおっ!?この感覚は久しぶりだな……あれ、結構少ないんだ』
奴隷時代の時のようにマオの脳裏にスラム街の地図が浮かび上がり、組織の幹部が拠点とする場所が表示された。幹部の数は思っていたよりも少なく、その理由はマオの捜索のために首領が仲間を脅したのが原因だった。
『首領が部下を殺した場面を見て怖気づいた幹部の何名かが街から逃げ出そうとしたんですよ。でも、全員がスラム街から脱出する前に首領に始末されました』
『え!?そんなむちゃくちゃな……組織の勢力が削れたら困るのは首領だろ?』
『首領からすれば幹部なんかいくらでも替えが利くと考えてるんですよ。首領が信じているのは自分の魔法の力だけです』
首領は幹部を含めた自分の部下を便利な捨て駒としか認識しておらず、自分に歯向かう者や期待に応えられない人間は容赦せずに殺す。そのせいで現在の組織の人員は減少する一方であり、マオにとっては都合がいい状況だった。
組織の人間はマオがスラム街の外で活動していると信じ切っており、幹部は配下の人間の大半をスラム街から出して捜索させている。そのためにスラム街の警備は疎かとなっており、今が攻め時だとアイリスは考えていた。
『今夜のうちにスラム街の幹部を全員潰しましょう。首領だけとなれば配下の人間は彼を恐れて逃げ出すはずです。味方が一人もいなくなれば首領にも勝ち目があります』
『わ、分かった。でも、本当に俺一人でどうにかなるかな?師匠に相談して力を貸してもらうのは……』
『なんて説明する気ですか?うっかりスラム街に入り込んで犯罪者集団に命を狙われていますと馬鹿正直に伝えますか?』
『……自分で何とかしろと言われそうだな』
仮にバクに助けを求めたとしても素直に応じてくれるとは思えず、そもそもバクは病気を患っているのか最近は元気がない。そんな彼に無理をさせるわけにはいかず、自分の不始末は自分でつけるしかない。
『そういえば魔法の修行の進み具合はどうですか?』
『全然駄目だね。魔法の形を変えるのは慣れたんだけど、師匠のように大きくするのができない。この後に練習するつもりだけど……』
『闇雲に練習して魔力を無駄にするだけですので気をつけてくださいね。今夜に備えて十分な体力と魔力は確保しておいてください』
『分かってるよ……はあっ、なんで上手くいかないんだろう』
自分が言い出したこととは言え、魔法の修行に関してアイリスから助言を伝える様子はない。マオは悪の組織に狙われていることよりも修行が進まないことの方が大きな悩みだった。
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