第33話 魔法の等級
「かあっ!!」
「うわっ!?」
バクが掛け声をあげた瞬間、彼の手元に浮かんでいた
「これがお前に教えた
「これが……中級魔法!?」
炎槍を手にしたバクは上空に目掛けて投擲を行うと、まるでロケット噴射の如く槍の後部から炎が噴出されてあっという間に見えなくなってしまう。それを見届けたマオはどうすれば自分が覚えられるのか尋ねる。
「師匠!!今のはどうすれば扱えるんですか!?」
「……何を言っておる?もう儂は何も教えんぞ、後は自分で考えろ」
「ええっ!?」
火球の時と同様にバクは直接指導を行うつもりはなく、彼を残して家に帰ってしまった。残されたマオは唖然と空を見上げるが、もう炎の槍は空の彼方に消えてしまった。
「また自分で考えて覚えろというのか……でも、最後の修行というのはどういう意味だろう?」
マオはバクの説明の言い回しが気にかかり、彼がやった事は火属性の新しい魔法を教えたに過ぎない。仮にも魔術師と呼ばれたバクが魔法を二つしか覚えていないなど考えにくく、どうして二つ目の魔法を覚えることが最後の修行になるのか気にかかった。
試しにマオはバクの真似をして手元に火球を作り出すと、槍の形に炎を変形させようとした。これまでの修行でマオの魔力操作の技術は格段に向上しており、意外と簡単に槍の形に変化させることに成功する。
「おっ、上手くいきそう……けど、随分と小さいな」
炎の形状を変化させることには成功したが、できあがったのは片手でも覆い隠せるほどの小さな炎槍であり、バクの作り上げた炎槍とは比べ物にもならない。これはあくまでも火球を槍の形に変化させただけで中級魔法と呼べる代物ではない。
(見ただけでも分かる。師匠の魔法は明らかに火球なんかより凄い火力だった)
空の彼方に飛んでいくほどバクの作り出した炎槍の火力は凄まじく、それに比べてマオの作り出した「火槍」は吹けば消えそうなほどに弱弱しかった。
「何が違うんだろう。俺の師匠との違い……」
『教えてあげましょうか?』
「いや……多分、これは自分で考えないといけないことだ」
アイリスの言葉にマオは首を振り、最後の修行は彼女の助言に頼らずに自分一人の力でやり遂げたいと考えた――
――この日からマオは「
バクの元に何度か訪れたが彼は一切助言は行わず、魔法に関しても最初の一度切りで二度と見せてくれなかった。最近は体調が悪いのか寝込むようになり、心配したマオがお見舞いに来ると怒って追い返す始末だった。
「儂の元に来る暇があれば修行に集中しろ!!お前みたいな不出来な弟子に心配されるほど老いぼれておらんわ!!」
「あいてっ!?」
奥さんはまだ旅行から帰っていないのかバクはいつも家で一人だったが、自分の弱っている姿を見られたくないのかマオが訪れる度に物を投げて追い払う。これでは修行を完成させるまでは会えそうになく、心配に思いながらもマオは修行に専念するしかなかった。
「師匠、大丈夫かな?」
『あれだけ元気なら平気ですよ。それよりも夜の警備の時間ですよ』
「いけね、忘れてた!!」
バクの見舞いの後にマオは自宅に戻ると、最近始めた新しい修行の準備を急ぐ。時刻が夜を迎えるとマオは仮面を装着した状態でフードを被り、アイリスの情報を頼りに街中で悪さを行う人間の成敗へと向かう。
『むむっ、北の方角で引ったくりです!!犯人の特徴は三十代後半の無精ひげの男です!!』
「了解!!すぐに急行する!!」
肉体強化を発動させたマオは超人的な身体能力を発揮して街中を駆け抜け、ひったくり犯を見つけると先回りして立ちふさがる。
「逃がさないよ!!」
「うわっ!?な、何だお前は!?」
いきなり現れた謎の仮面の人物にひったくり犯は驚くが、背丈と声音から相手が子供だと気づくと態度を一変させて脅しをかける。
「そこを退け!!ガキだからって容赦しないぞ!?」
「やれやれ、またこのパターンか」
『仮面のお陰で正体がバレることはないから派手にやっちゃいましょう!!』
逆上して襲い掛かろうとしてくる犯人に対し、溜息を吐きながらマオは相手の腹部に目掛けて掌底を叩き込む。拳で殴りつけると骨が折れる危険性があるので掌で軽く叩いて手加減したつもりだったが、肉体強化を発動したマオの攻撃は普通の人間に耐えられるはずがなく膝をつく。
「がはぁっ!?」
「しばらくは起き上がれないよ。警備兵がもうすぐ来るから大人しく捕まりなよ」
『さあ、マオさんも見つかる前に早く行きましょう!!』
ひったくり犯を一撃で昏倒させると、マオは犯人を残して立ち去る。しばらくすると被害者が駆けつけて一緒に同行していた警備兵が犯人を取り押さえた。
「あ、あいつです!!あの男が私の荷物を奪って逃げた男です!!」
「よし、捕まえろ!!」
「大人しくしろ!!」
「げほっ、げほっ!!に、逃げないから……先に医者のところに連れて行ってくれぇっ……!?」
マオに殴られた男は痛みでまともに動けず、捕まえる前から瀕死状態に追い込まれた男に警備兵達は不思議そうに顔を見合わせた――
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