火弾の魔術師 ~女神ナビで最強の魔法使いを目指す~
カタナヅキ
プロローグ 《女神ナビ》
第1話 黒魔術の儀式
「ええい、また失敗ではないか!!」
「はあっ……部長、もう諦めましょうよ」
深夜の時間帯に中学校の空き教室に若い男女の声が響く。女性の方は黒色のフードで全身を覆い隠して怪しい仮面を被っており、もう一人の少年はフードは被っているがこちらは素顔を晒していた。
「あのインチキ店主め!!またまがい物を買わされてしまった!!」
「ちょっと、声が大きいですよ!?警備員さんに見つかったらどうするんですか!?」
「そんなの構うものか!!どうせいつものことだと見逃してくれる!!」
仮面を被った女性の正体は「オカルト研究部」の部長であり、彼女の傍にいる少年はたった一人だけの部員となった「間藤 真央」という名前の男子生徒だった。二人は夜中の学校に侵入して行っていたのは黒魔術の儀式だった。
数時間前に部長が古本屋にて偶然に発見したオカルト本が事の発端であり、本の内容は「邪神」と呼ばれる存在と巡り合う儀式が記されていた。彼女は儀式を実行するために部員である真央を呼び出し、深夜の学校に不法侵入して儀式の準備を行う。
「もう十二時だというのに全然反応しないではないか!!また偽物を買わされたのか!?」
「まあまあ、いつものことじゃないですか。邪神なんているわけありませんよ」
「何を言うか!?君はそれでもオカルト研究部の部員か!?」
「いや、そういわれても……そもそも幽霊部員でいいという理由で入ったのにこんな事を手伝わされるなんて聞いてませんよ」
「そ、それは言わない約束だろう!?」
「知りませんよそんな約束……」
真央がオカルト研究部に入ったのは学校の規則で生徒は必ず部活に所属することを義務付けられたからであり、人数が少なくて廃部寸前で困っていた部長の頼みで入部しただけに過ぎない。
少し前まではマオ以外にも何人かの生徒が所属していたが、部長の奇行に付いていけずに殆どの生徒が止めてしまった。彼女は月に一度の割合でおかしな儀式をやらかすために部員も迷惑していた。
「くそっ!!折角雰囲気づくりのために祖父からわざわざ借りてきた懐中時計も無駄になってしまった!!」
「懐中時計?大分年代物のようですけど、それが儀式に何の役に立つんですか?」
「ん?いや、別に時間を確認するために持ってきただけだ。この空き教室の時計は壊れているからな」
黒魔術の儀式に利用した教室の時計は止まっており、時間を計るために部長は懐中時計を持参した。しかし、マオとしては時計と儀式が何の関係があるのかと不思議に思うと、部長はオカルト本を見せつける。
「この本によれば深夜十二時を迎えた時に魔法陣から漆黒の光が放たれて邪神の住まう世界に辿り着けると書かれているんだ!!それなのに十二時をもう五分も過ぎているのに何の反応もない!!やはりこれは偽物だったんだ!!」
「そ、そうなんですか……」
部長はオカルト本を信じて儀式のためにわざわざ学校に忍び込み、教室の床一面に魔法陣を描きあげた。それだけ苦労をしたのに深夜まで起きて儀式が失敗に終わった事に彼女は怒りを抑えきれずにオカルト本を床に叩きつけた。
「もういい!!私はもうは帰らせてもらう!!後片付けは君に任せたぞ!!」
「ええっ!?ちょっと部長!?」
「準備は全部私がやったんだ!!ならば後片付けぐらいは部員の君に任せる!!」
かんしゃくを起こした部長は真央を一人だけ残して立ち去り、残された真央は床一面に描かれた魔法陣を見てため息を吐き出す。こんな時間帯に呼び出されただけでも非常識だというのに面倒な掃除を押し付けられて我慢の限界を迎えた。
「くそっ、なんて人だよ……さっさと退部届出しとけばよかった」
真央は懐に隠し持っていた退部届を取り出し、本当は今日にオカルト研究部を退部する予定だったが、部長が去った以上は仕方ないので後片付けをすることにした。本音を言えば警備員に見つかる前に帰りたいところだが、教室の床を汚したまま帰るのは気が引けた。
「はあっ、帰るのが遅くなりそうだな……あれ?」
掃除の前にマオはなんとなくスマホを取り出して時間を確認すると、時刻は「十一時五十九分」と表示されていた。先ほど部長は十二時から五分も過ぎていると言っていたが、実際の時刻はまだ十二時を迎えていない。
「もしかして部長の懐中時計遅れてたのか?」
部長が持参した懐中時計は年代物であり、時刻が遅れていたとしてもおかしくはない。しかも偶然にも部長が本を捨てた場所が魔法陣の中心であり、マオは本を拾おうと魔法陣に踏み込んだ瞬間にスマホの時計が十二時を示した。
「うわっ!?」
本を拾い上げようとした瞬間、魔法陣の中心部に亀裂が生じた。真央は最初は床が壊れたのかと思ったが、よくよく観察すると亀裂の位置は床ではなく、魔法陣の上の空間に亀裂が生じていた。
「な、なんだこれ!?どうなってるんだ!?」
空間に生じた亀裂は徐々に大きくなり、魔法陣の上に落ちていたオカルト本を手にしようとしていた真央の元に迫る。そして亀裂に触れた瞬間、とてつもない吸引力で身体が引き寄せられていく。まるで掃除機に吸い込まれる昆虫のような感覚を抱き、抵抗する暇もなく真央は亀裂に飲み込まれてしまった――
『――うわぁあああっ!?』
「はぐぅっ!?」
亀裂に飲み込まれた真央は真っ白な空間に放り込まれ、衝撃と聞き覚えの無い女性の声を耳にした。真央がぶつかった相手は何故かブリッジをしており、お腹の上にマオが落ちてきたせいで体勢を崩してしまう。
『いてててっ……だ、大丈夫ですか?』
「あたたたっ……人が久々に運動している時に落ちてくるなんて、はた迷惑な迷える魂ですね!!」
マオがぶつかった相手は見目麗しい女性であり、しかも背中に天使の羽根のような物を生やしていた。
『だ、誰!?』
「それはこっちの台詞ですよ!!人の世界に勝手に入り込んで何様のつもりですか!!」
『えっ!?あっ、えっと……なんかすいません』
𠮟りつけられた真央は反射的に謝ってしまうが、この時に身体に違和感を覚えた。頭を下げようとしたが何故か身体が言う事を聞かない事に気が付く。
「どこの世界から迷い込んできたのか知りませんけど、いきなりぶつかってくるなんて失礼じゃないんですか?」
『どこの世界って……まさかっ!?』
最初は目の前の女性が何を言っているのかは真央には分からなかったが、先ほどの黒魔術の儀式を思い出す。部長の話によれば邪神が住まう世界に通じる儀式だと聞いていたが、状況的に考えて真央がいる場所は現実では有り得ない世界であり、目の前の女性こそ部長が話していた邪神ではないのかと考える。
『じゃ、邪神様!!どうか許してください!!』
「誰が邪神ですか!!私がそんな悪い神様に見えるんですか!?」
『あれ!?違うの!?』
邪神呼ばわりされた女性は怒った風に手を伸ばすと、何もない空間から手鏡が出現してその手で握りしめる。女性は真央に手鏡を向けた瞬間、まるで蛍のように光り輝く存在に変化していることに真央は気が付く。
現在の真央は人間としての肉体を失い、小さな光の球体と化していた。自分の変化に真央は戸惑いを隠せず、何がどうなっているのか理解できなかった。
『な、なんじゃこりゃあああっ!?』
「やれやれ、ようやく自分の状態を理解したようですね。残念ながら貴方の肉体はこの世界に訪れた時点で消失してしまったんですよ」
女性の言葉に真央は理解が追いつかず、そんな彼の心情を知ってか知らずか女性は自己紹介を行う。
「私の名前はアイリス、この狭間の世界の管理人です」
『は、狭間の世界?』
「あなたのいた世界と別の世界の合間に存在する特別な世界と言えばいいんですかね」
女性の名前はアイリスというらしく、彼女持っていた手鏡を手放した瞬間に消え去る。そのような芸当を見せつけられて真央は彼女がただの人間ではなく、本物の神様のような存在だと認識させられた。
※土下座ではなくブリッジで出迎える女神様(笑)
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