魔王の娘ですが勇者に一目惚れしたので結婚することにしました!!
藤川みはな
第1話 魔王と娘
「そろそろ勇者一行が到着する頃ですわね、
お父様」
薄暗い石でできた閉塞感のある城の中で
男が座る玉座の横にひとりの少女が佇んでいた。
その少女の肌は雪のように白く、
青にも見える銀髪を腰まで伸ばしていた。
血のような赤い瞳は吊り上がっていて
まるで悪女のようだ。
いや、悪女というより悪魔である。
両耳の後ろから覗くのは黒く美しい角。
よく見ると耳がエルフのように尖っていて
この少女が人外であることを匂わせている。
「ああ、そうだな。
エリザローズ。援護を頼んだぞ」
低い声を出した男はエリザローズと同じ
黒いツノと尖った耳を持っていた。
体は筋肉質で幾度も修羅場を
切り抜けてきたことが伺える。
血のような赤い瞳は娘と同じように
吊り上がっており、右目には鋭いモノで
斬られたような古傷が男の視界を
遮断するように縦に刻まれていた。
鎧を身につけたその姿は
今から戦場へ赴くかのようだ。
「もちろんですわ。
魔王たるお父様の行く末を阻む者は誰であろうと……抹殺します」
ギラリと黒く煌めく赤い瞳に
魔王であるエリュクシュエルはニヤリと笑う。
随分と……悪魔らしくなったものだ。
「ここが魔王の間か!!」
そんな声が聞こえてエリザローズは即座に
魔法を展開する。
勇者の声……!!
勇者には神の加護がついているから
簡単には殺せないわ。
そうね……
わたくしの呪いをかければ……!!
重厚な鉄の扉が蹴り倒され、
そこに現れたのは勇者一行。
魔法を展開しようとしていた
エリザの動きがぴたりと止まった。
「よう、魔王。お前を倒しにきたぜ」
猫のように大きな茶色の瞳に
オレンジ色の癖のある髪、
鼻は低いが愛嬌のある顔立ち。
エリザローズの頰がピンク色に染まる。
「勇者、いっけめーんっ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます