第1話 遭遇


(律視点)


 日差しが照りつける道を歩いていき、自宅付近の公園に到着した。

 そろそろこの暑さにも限界だったので、自動販売機で水でも買おうと自転車用に設置された柵を超えて中に入っていく。

 自販機の前までたどり着き、財布を取り出そうとしたところで、公園の反対側の入り口にふと目をやると、大学生に絡まれている女子高生、というのを発見した。

 大学生、というのは俺の推測なので確実ではないが、絡まれている方が女子高生だというのは確実である。

 なぜ言い切れるのか、それはあの方が俺のクラスメイトだからだ。普通なら助けに行くべきなのだろう。

 ただ、少し躊躇ってしまう理由がある。それもそのはず、このクラスメイトには彼氏がいるのだ。普段直接話さない俺にもその話が伝わってくるくらいには有名だし、まだ噂されているのが今も付き合っている証拠ともなっている。

 皆さんも誰々が付き合っていると言う噂など何度も耳にした事があるだろう。

 会話内容を盗み聞きしてみたところ、おそらくナンパであるようだ。


「友達と待ち合わせていますので!」

「そんなこと言わずにさ、」


 などの会話が断片的に聞こえてくる。

 第三者からすると、クラスメイト側は彼氏がいる、と伝えればいいだけであるし、ナンパ側も引き留めはせど手は出さないところに若干の理性を感じる、などと考えることができるのだが、当事者たちはそうはいかないだろう。

 そしてこういったイベントは彼氏が駆けつけることで解決されるのでは…などとぐだぐだ考えていてもまだ奴は諦めていないようだ。

 流石に見て見ぬふりもを続けるわけにもいかない。

 そう思い現場まで歩き始める。

 ただ間に入った後の処理が面倒だ。やれお前はこの子の何なんだだの、彼氏でもないのにでしゃばるななど言われるだろう。ので、俺自身が不快だった、という言い訳を用意することにした。これであとはなんとかなる。いや、なれ。ということで。


「あの、すいません。」

「あ?」

「道をお尋ねでしたら、私が代わりにお答えいたしますよ」

「はぁ?見てわぁんねぇのか?俺は今からこの子と遊ぼうとしてんだよ」


 ふむ、話しかけることで気まずくなって帰ってくれるのが俺的には一番ありがたかったのだが、流石にそううまくはいかないらしい。

 まぁこのくらいで諦めるのであればここまで粘ったりはしないか。


「てか何だお前、急に話してるとこに入ってきやがって。」

「この方のクラスメイトですが。」


 そこで女子の方がハッとした顔になる。いや、そこは気づいてくれよ。あまり話をしないとはいえクラスメイトだぞ。

 まぁ俺もこの方の名前までは覚えていないのでとやかく言えないのだが。


「ただのクラスメイトが邪魔してくるんじゃねぇよ。」

「ですが、この方には既にお相手がいらっしゃいますので、このあたりにしておきませんか?」

「ちょ、なんで知って」

「お相手がいる?なんだ、そのお相手ってのは。」

「……」

「……」


 まずい。今までの暑さにやられたか、こいつの発言の頭の悪さに脳が驚いたかはわからないが、少し意識が朦朧としてきている。

 クラスメイトの方も呆気に取られたのか、同様に絶句してしまっている。

 というか正直こうやって話しているのが辛いくらいにはしんどい。さてどうしたものか…。

 などと考えていたら。


「りっくん、どうしたの?こんなところで。」


 急に俺を呼ぶ声が聞こえた。

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