第2話

それにしても、背が高いな。

何センチあるんだろ?



おまけに髪は暗い赤に染まり、制服を着崩している。


ワルそうな感じだけど、顔を見れば怖くはなさそう……。


そんなイメージだった。


それに、よく見ると、《風紀》って銀色の糸で刺しゅうされた赤い腕章がついている。



「ここ、ムダにバカデカいからな。迷ったんだろ? 案内してやるよ」


「あ、ありがとうございます!」


その人が歩き出したので、距離を作って後を追う。



校門をくぐったはずのこの敷地に、長い並木道が続いていて、しばらく歩くと真新しい白い校舎の3棟が建ち並んでいた。



「ほら、着いたぞ。職員室は入ればすぐ判る。じゃあな」


「ありがとうございました!」


その人はさっさと昇降口に行って、校舎の中へ消えた。



あっ……。

名前、訊(き)けばよかったな……。


そう思ったのは、なぜだかわからないけど、あの人にまた会えるんじゃないかってどこかで予感がしていた。



まあ、でも、何はともあれ、目的は達成されたわけで、とにかく私は職員室へ向かったのだった。

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