ヤリ捨てされたギャルが嘘告白して来たので振ってやった。結果泣きつかれた。
やこう
第1話
全3話の短編です!よろしくお願いします!
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放課後、大学の校舎を出ようとしていた俺は、背後から響く明るい声に足を止めた。
「ねえ、
振り返ると、そこには派手な格好のギャル――
明るい茶髪をゆるく巻き、露出の高い服を見事に着こなしている彼女は、普段から周囲の男子学生たちの視線を一身に集めている。
いつもは軽口を叩いて、皆と冗談を飛ばしている印象だが、今は違った。
彼女の笑顔にはどこか無理があるように見えたのだ。
「ずっと言おうと思ってたんだけど……私、斎藤くんのこと好き!」
突然の告白に、俺は目を見開く。正直、驚いた。
「……え?」
思わず反射的にそう答えてしまったが、次の瞬間には違和感が押し寄せてくる。
このタイミングで、わざわざ俺に告白してくる? しかも、如月のことは名前くらいしか知らない。
サークルも違うし、講義で一緒になることもほとんどない。そんな彼女が、どうして俺のことを?
それに、彼女の笑顔が妙にぎこちない。
まるで無理やり作っているかのように、唇が引きつっていた。これまで何度か見かけた彼女の明るい笑顔とは、まったく別物だ。
「……ごめん、俺、付き合えない」
結論を出すまで、時間はかからなかった。
「……え?」
如月の表情が一瞬固まる。だが、次の瞬間にはすぐに笑みを浮かべ、
「まあ、そりゃそうだよね!」
と明るく言ってのけた。
「いや、ほんと、冗談みたいなもんだし! そんなマジにならなくていいって、斎藤くん!」
それを聞いた瞬間、俺は確信する。
やっぱり、彼女は本気じゃない。ただの遊びだ。
──でも、どこか引っかかる。
彼女の態度はあまりにも軽く、あっさりしすぎているのに、その目には不自然なまでの力がこもっていた。
口元は笑っているのに、目が笑っていない。彼女が振られても気にしないふりをしていることは明らかだった。
「じゃ、またね〜!」
如月は軽く手を振り、くるりと背を向ける。その瞬間、俺は妙な違和感を覚えた。彼女の肩が、かすかに震えている。
(……泣いてる?)
まさか、と思ったが、俺の足は反射的に彼女を追いかけていた。
「……おい!」
慌てて声をかけると如月は驚いたように振り返り、俺の顔を見上げる。
「……なに?」
声は震え、目元には涙の痕があった。やはり泣いていたのだ。
「……君、本当にそれでいいのか?」
俺が問いかけると、如月は驚いたように目を見開き。
──そして次の瞬間、堰を切ったように泣き崩れた。
「……なんで、なんでよおおお……!」
如月は両手で顔を覆い、嗚咽を漏らしながらしゃがみ込んでしまった。
周囲の視線が気になったが、それ以上に、彼女の突然の感情の爆発に俺はどうしていいかわからず、ただその場で立ち尽くすことしかできなかった。
「ねえ、どうして? なんであんたまで振るの? 私が告白したら、みんなすぐに『いいよ』って言ってくれるのに……なんであんたは、あっさり断るの……?」
泣きながらも、如月は俺の袖をぎゅっと掴み、見上げてくる。
その目には、寂しさと戸惑い、そして怒りが入り混じっていた。
「……そんなの、俺に言われても困るよ」
「困るって、どういうこと!? あんた……あんたなんか、全然イケてないじゃん! 普通の男子で、全然目立たないし、なのに、なのにっ……!」
「お、おい、イケてないってなんだ……!」
俺を罵倒しながらも、彼女の声は震えていた。
まるで、自分自身を責めるような響きだ。
思わず俺は、彼女が本当に告白を「試し」にしたのか、それとも別の意図があったのか考え込んでしまう。
「……お前、本当に冗談で告白したのか?」
俺が慎重に問いかけると、如月は一瞬目を伏せ、そして顔を背けた。
「……冗談に決まってるでしょ。だって、そんなの、あんたみたいな真面目君に本気で言うわけないじゃん……」
言葉の内容と裏腹に、如月の目は潤んでいた。
彼女が見せる必死の笑顔は、あまりにも脆く、今にも崩れ落ちそうだった。
しかし俺は彼女にしっかり言っておかなければならないと思った。
「……君さ、こういうの、もうやめたほうがいいよ」
俺はできるだけ柔らかい声でそう言った。
「嘘の告白なんてするもんじゃない。君がそれで傷つくなら、なおさらだ」
その俺の言葉が彼女の何かを崩壊させたのか。
彼女はその言葉に肩を震わせ、そしてまた泣き出した。
「だって……だって、誰も本気で私のこと見てくれないんだもん……!」
その声には、ただの不満ではない、もっと深い悲しみと絶望が混ざっていた。
「男なんて、最初は『可愛い』とか『好き』とか言ってくれるけど……結局みんな、体だけ目当てで、私が本気になったら、すぐに捨てるんだもん……! 最近の彼氏もそうだった……!だから、どうせ遊びなら、遊びで返してやろうって……思って……」
如月の言葉は、断片的で支離滅裂だった。
それでも、その内容は衝撃的で、俺はただ彼女の話を聞くことしかできなかった。
「私だって……ちゃんと好きになってほしいよ……私だって、本気で、誰かに好きって言われたい……なのに、あんたまで……」
彼女の声はどんどん小さくなり、最後は掠れるように消えた。
俺は言葉を失い、ただ彼女の肩に手を置くことしかできなかった。
「……ごめん、俺には君が何を考えてるのか、ちゃんとわかってなかった」
俺の謝罪に、如月はゆっくりと顔を上げた。
涙でぐしゃぐしゃになった彼女の顔は、見るからに疲れ果てていた。
「……もう、いいよ。あんたに謝られても……私、バカみたいだよね……」
そう呟く彼女の声は、あまりにも切なかった。これ以上何を言えばいいのか、俺には見当もつかなかった。
ただ一つだけ言えるのは、彼女が冗談なんかじゃなく、本当に傷ついていたということだ。
「もう、やだよ……誰かに好きって言われたいだけなのに……誰か、私を、ちゃんと見てよ……」
そう言って泣き続ける如月の姿を前に、俺はただ、彼女が少しでも落ち着くのを待つことしかできなかった。
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