第3話

   

 後日、予備校のビルの屋上にも上がってみたよ。

 空調や電気関係の機器とか、給水タンクっぽい水槽とか、エレベーターを巻き上げるための機械室とか。色々と並んでいて、思ったよりもゴチャゴチャしていた。そうした設備に用事がある人もいるから、屋上の扉は事件当時、施錠されていなかったらしい。

 もちろん屋上のへりには、安全のための柵も設置されていた。ただし、何かの基準で目隠しフェンスならば約二メートル、転落防止柵は約一メートルというのがあるそうで、あのビルの場合もそれくらいの高さしかなかった。

 一説によれば、成人男性の平均的な腰の高さが、ちょうど一メートルらしい。祥子は男性ではないけれど、女性にしては背が高い方だったから、その気になれば一メートルのフェンスなんて簡単に乗り越えられただろうな。

 いや、乗り越えられるだけではない。ちょっと体を「く」の字にするだけで、上半身は完全に柵の外に出てしまうのだから……。

 後ろから突き落とすのだって、簡単だったに違いない!


 いや、もちろん私も知っているよ。警察が祥子の死を自殺と断定したことも、捜査を打ち切ったことも。

 だけど、娘が自殺なんてするはずがない!

 なぜならば……。

   

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