「今度、お父さんにも彼を紹介するね」

烏川 ハル

第1話

   

 窓の外を見てごらん。ほら、雪が降ってきたよ。

 三年前のあの日と同じだ。いや、いきなり「あの日」とか言っても、君には通じないかもしれないが……。

 娘が死んだ日だよ。

 郷川ごうかわ祥子さちこという名前を聞けば、君も思い出すかな? そう、あの子が私の娘だったのさ。


 彼女は当時、二十歳になったばかりでね。国立大学の文学部で、フランス文学を専攻していた。

 課外活動としては、まずボランティア活動のサークル。アルバイトも、予備校のチューターという真面目な仕事だ。良きお姉さん役として存在そのものが手本になったり、もっと具体的に、大学進学を目指す若者の相談に乗ったりしていたのだろうな。

 ほら、ここからも見えるあのビルだ。今さら説明するまでもないが、あれが祥子の働いていた予備校だ。週三回くらいのペースで、祥子はあそこにかよって……。

 そして、あの日。あのビルの屋上から落ちて亡くなったのだ。

   

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