本編

第13話 能力

「ふぁ〜〜〜」


 鳥が鳴く頃。日が昇り1日の始まりとされる朝。僕は今日のドキドキワクワクを探しに冒険をするのだ!


「んーー、今日も良い気ぶ…」


 この時は思いもしなかった。まさか体を起こして前を見ると変な老人がいるなんて。


「ぬぅぅぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」


 朝っぱらからバタバタと足音が届き僕の部屋へと近づいてくる。


「な、何だ!?何だ!?どうしたんだイリウス!」


 この人はケルトさん。僕を拾ってくれた感謝してもしきれない人だ。犬科の獣人さんで赤い眼をしていて身体もとても大きい。僕のお父さんだ。


「朝っぱらからよくそんな声が出るの〜…」


 この人はバク。見た感じ僕と同じ人間。年季の入った喋り方をしていてまるでおじいちゃんみたい。僕のお兄ちゃん。


「敵襲…?かと思いましたが…」


 この人はトラさん。ケルトさんと同じ獣人さんだけど虎の獣人さん。黒い模様が独特でかっこいい!いつも静かで冷静そうな人。僕の叔父さん。


「そ、そこ!そ…そそそそこ!」


「椅子?机か?くっそ何も見えねー。トラ!」


「俺も何も見えんぞ」


「うぬー…霊でも無ければ我々が見えない者なぞ居るわけ…」


「主、気配もしないので幻覚の可能性が」コソコソ


 ケルトさん達に必死に説明しようとするが、みんなには見えていないらしい。僕にしか見えないことある?


「うーむ、黙って見ていたが…本当に見えているのか」


「しゃべったぁぁぁぁ」


「うお、何だいきなり」


 僕が急に声を上げるからケルトさんも驚く。


「わ、わ…あれ?何かこの人…見たことある気が…」


 僕はあの時の記憶が蘇ってきた。そう、僕が能力者になった時の記憶。花畑で出会ったあの老人は…


「あー!お花くれた人!」


「お、お花!?本当にどうしちまったんだお前!?」


 ケルトさん達は僕が何を言っているか分からない。とりあえず説明しようとした時。


「はー…今宵は其方に話があって来たのだ。そやつらを退けてはくれぬか?」


 僕はちょっと考えた。


「ケルトさん達どっか行って欲しいです」


「ま、まさか本当に幻覚症状でもあるのかの…」


「もう、どうしちまったんだお前…あ、もし何かあったらすぐ呼べよ!絶対だぞ!絶対だからなー!」


 ケルトさんは出ていくのを拒んでいたが僕が押し出した。こうして僕の部屋には老人と僕だけが残った。


「よし、話をしよう」


「はい!」


「今日ここまで参ったのは其方に能力について説明するためである」


「能力?」


「そう、能力だ。神に憑かれた者のみに与えられる特別な力。其方は能力を使ってこの世界で生きてもらう。そして、其方に与える能力は、

       【歪みを操る能力】だ」


「ゆがみ…?」


「使い方は体が教えてくれるだろう」


「なるほどー!ありがとうござます!おじいさん!」


「おじいさんではない!あー自己紹介を忘れていたな。我は四大神よんたいしんが1人、『生物を生みし神』だ。世神同様生神しょうじんとでも呼ぶと良い」


「生神様!よんたいしん?って何ですか?」


「詳しいことはあの者達に聞くと良い。我は忙しいからもう行くぞ」


「えー行っちゃうんですか!?」


「神は仕事が多いからな。ではまた会おう」


 僕は手を振って神様を見送った。天井をすり抜けていく姿には驚いたが今更だ。僕はその後リビングに行ってケルトさん達に状況を説明しに行った。


「つまりは…お前は特に何もないこの家で神の姿を見て能力の説明をしてもらった。そしてお前に憑いた神は四大神の1人である生物を生みし神と。そういうことか?」


「はい!」


「な、何者なのだ…こいつ…」


 ケルトさんとトラさんは驚きと呆れを混ぜたような顔をしていてバクは全力で引いている顔をしていた。


「んーまずお前からの質問に答えるぞ?四大神っつーのはな、神の中で唯一ある階級だ」


「神様の中で階級って一個しかないんですか?」


「そうだ。例えばの話だがな、川の神と海の神だとどっちの方が上だと思う?」


「海の方が広いし海だと思います!」


「じゃあ海の神と山の神だったら?」


「同じくらいじゃないですか?」


「なら、○○山の神と○○海の神が居たとしたら?」


「んー…分かんないです…」


「そう、神の地位っつーのはえぐいくらい面倒くさい。だから基本神の地位は無いんだ。だがそれじゃあ神の世界をまとめられない。そんな時作られたのが四大神だ。四大神はその名の通り4人の神で構成されててな。混沌・秩序を司りし神、無機物を生み出し神、生物を生みし神、そして…」


「我に憑いている神、世界を管理し神だ。お主も知っている世神だ」


「そんな偉い神様が憑いてるんだね!」


「其方にも憑いておるのだぞ…」


バクは能天気なイリウスにさぞかし呆れている。


「そんなことよりだ、神が見えるとはどういうことだ?」


バクは少し怖い顔で言ってきた。さっきからみんなに詰められててちょっと怖い…


「うん…神様居たよ?みんな見えなかったの?」


「見えるわけないであろう…」


うーんとみんな考え込んでいる。


「お前が特別ということだな。理由は分からんが」


トラさんが一言言うとみんなそれしか結論が出ない為納得せざるを得ない。


「とりあえず、この世界ローディアについてと神力の使い方から覚えてさせるかな」


ケルトさんが分かんない事を言っているがまた勉強させられるみたいだ。

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