第4話 隠された事実
「いやあ、それにしても原川先生の言っていた旧友はまさか防衛省の長、村下哲夫だったとは…」。一室に招かれた古田は冷や汗がとまらず、いつ洗ったかさえ分からないハンカチでしきりに首を拭いていた。
「原ちゃんとはね、大学で知り合ってね、進んだ道は違えども、今はどっちも国のためを思って生きているって感じかな」。
「へ、へえ…」先ほどからの原ちゃん呼びにずっと違和感を覚えていた古田だったが、ようやく慣れてきたところであった。
「で、君は何でここに来たの?」村下大臣が湯気がたつお茶を飲み、話を切り出した。そうだった私は別にアツアツのお茶を貰いに来たわけじゃないということを思い出した。
「私は今日ここに先日、古墳から出現した例の巨大生物について政府の見解をききにまいりました」。
「あー…。あれねえ」。刹那に空気がよどむ。
「政府としてはねえ。竜巻による被害ってことにしてるの」。
「は?」古田は目の前にいる防衛大臣が何を言っているのか一切理解できない。
「え?いやいや、先日のテレビでも速報されてたじゃないですか!姿もばっちり、ほら、ネットでも普通に出回ってますよ?」
スマホを村下大臣にむけると眉をひそめる。
「いやあ、まあ、ねえ、今ここで竜巻じゃないっていうと国民の不安をあおることになるし、野党に攻撃の材料を与えて支持率がもっと下がっちゃう可能性が高い。いや、私も不本意なんだよ?一億二千万人に対して嘘をつくっていうのは、けど真実を開示するのは今じゃない。メディアの統制も頑張っているんだ。君はジャーナリストだったね、くれぐれも…」古田が席を立った。
「ん?どこに行くんだい?」古田はドアの方に向かう。
「気を悪くしたならわるか…」。大臣が話し始めると背を向けたまま古田は立ち止まる。そして五秒ほど沈黙が流れたのちに口を開いた。
「私はただ―」
「この国で汗を流したくないと感じたまでです」。
「失礼しました」。古田がドアを握ろうとした瞬間、ドアノブがすっと手を避け、ドアが開いた。見ると息を切らしたようすで官僚らしき人物が入ってきた。
「大臣!たった今、大阪に三体の巨大生物が出現しました!!」
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