大和の守護神
末人
第1話 巨大生物
―古墳。それはただの古代の墓などではなかった。古代文明は現代文明を凌駕した―
「ご覧ください!!信じられま、せん!!」
ネームプレートの「華山」が風によって大きく揺れる。
「今、山鍋古墳の土が大きく舞い…」ドスンと鈍い音とともに目の前が砂埃に覆われうす暗い。
「あ…あれは…」目先に現れたのは未知の生命体だった。
「巨人です…!!!」
「政府は緊急閣僚会議を開き、巨大生物対策本部を…」。
二〇二六年、十二月二十三日水曜日朝六時半。息が白い朝だった。古田新が出勤前にテレビをつけた。目が悪いのでおよそしか見えないが耳ではいつものアナウンサーの声帯がテンパっていることがすぐに分かった。何らかの予期せぬ事態が起きている。画面を見ながらメガネをつけると黄色いテロップが書かれている。「巨大地震発生、避難!」。何が起きているのか分からないままあてもなくチャンネルを回す。しかし驚いた。どのチャンネルも同じ内容だ。
チャンネルを元に戻すとアナウンサーが横から紙を受け取った。
『今、現地からの映像が届いたようです!』
すると砂埃だらけの画面が映し出される。
『こちら…。現地の華山です。現在、山鍋古墳上空です。古墳が、古墳が大きく動いています!』
なぜ地震で古墳が映し出されるのか俺には分からなかった。そんなことを考えた束の間。
『ご覧ください!!信じられま、せん!!』ヘリコプターの音がバタバタとうるさくテレビリポーターの声が所々途切れる。
『今、山鍋古墳の土が大きく舞い…』ドスンと鈍い音とともに画面が砂埃に覆われうす暗い。
『あ…あれは…』息をのんだ。画面に現れたのは未知の生命体だった。
『巨人です…!!!』
時が止まった。己の眼球を信じられなかった。巨人と呼ばれたそのものは目が赤く、土や草木に覆われた人型に見えた。次の瞬間。耳をへし折るような金属音がした。画面が大きく揺れ、まるで自分も揺れている感覚に襲われる。
『墜落する!墜落する!!』と声が流れる。ヘリコプターの音が不規則になり、画面には先ほどよりも大きく巨人の目が刹那に映る。
『あああああああ!!!!』
『失礼しました。映像が乱れました。速報です。政府は先ほど緊急閣僚会議を開き、災害対策本部を…』。アナウンサーの目がぴくぴくと震えていた。テロップが「巨大不明生物出現、避難!」に変わった瞬間だった。
「いやあ驚きましたねえ。まさか古代の人々の文明が現代文明を凌駕するものだったとは」。俺事フリージャーナリストの古田新は霞が関近辺の和菓子店のランチルームでアフロ姿の考古学者、原川考に話を聞いていた。名前のごとく俺は自己紹介をすると決まって古いんか新しいんかはっきりせい!と言われる人生を送っていた。
二日前、突如として大阪に現れた巨大不明生物は再び元居た場所、山鍋古墳に戻り(になり?)、事態は一時沈静化していた。しかしながら山鍋古墳周辺五〇〇メートルの住民の家々は踏み倒されたり、水道が止まったりと被害は甚大なものだった。
「ところでえ、なんで巨人が突如として出現したか知りたいかね?」原川がサングラスをくいっとする。本当にこんな格好で学者なのかはさておき、俺の好奇心は止まらなかった。
「おねがいします!」
「ああ。腹がへったなあ」
「ええ、分かりますとも。先生の大好きなモンブランクリスマス特別バージョン、後日お渡ししますから」
「え?後日?」
「今日っ!!!」
先生はにやついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます