第9話

一日かけて、森を歩き、ビルフォートの街並みが見えるところまで来た。


よって来たゴブリンにシールドバッシュをかます。仰向けに吹っ飛んで、動け無くなる。ケビンの初期装備の短剣でトドメを刺した。もちろんレベルは上がらない。


これも後から判明したのだが、俺は練習しなくてもシールドバッシュが使えた。あの真面目に日課としてやっていた鍛錬はなんだったのか?短剣にはケビンの思いが沁み込んでいて、呪われた装備のスキルとしてあるみたいだ。何故分かったかというと、ケビンの初期装備の短剣だ。木にめり込んだ短剣をプレゼントされ、呪われるんじゃないかとビクビクとしながらも、しげしげと短剣を見ると{ケビンの短剣、リリィの加護}とあった。俺の盾を見ると{ケビンの盾 呪い}とあって、短剣が呪われていない事が分かった。更に見るとシールドバッシュなるスキルが表示され、短剣にもスラッシュというスキルが見えた。スキルの使い方が閃いてスラッシュを放つとなんと見事に斬撃が出たのだ。


レベルが上がんないけど、良い武器を買えば強くなれるのか?なんだかなー、コツコツとチマチマとやっていく楽しみが遠ざかっていく。負けを知りたい。


「ここまでのよーだよー」


「よーよーうるさいなぁ」


「ごめんよー」


「冗談だよ、世話になった」


「こちらこそだよー」


「「はははは」」


自然とハグをして、背中を叩きあった。ほんのりと死臭がした。もう慣れたモノだ。ゾンビマンは俺の中で大切な人になっている。多少臭かろうが構いやしない。


「気をつけるんだよー」


「…ああ、お前もな」


俺は振り返りもせずに歩いた。ビルフォートの街並みが輝いて滲んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る