奇跡の倉~濡れ衣を着せられ会社を首になり、恋人に捨てら、友達にも裏切られた。そんな時、倉が異世界と繋がった。異世界交易で見返してざまぁしてやる~
喰寝丸太
第1話 不幸の連続
俺は倉本・
25歳の社畜サラリーマンだ。
ばあちゃんが死んで家を相続した。
というのもこの家、太い道がないのだ。
歩いて入る分には問題ないが、車だと入れない。
道を広げようにも家が建ってしまっていて広げられない。
土地の価値がほとんどない所なのだ。
管理費や固定資産税を払うのが嫌なので誰も欲しがらなかった。
俺は子供の頃に遊びに来てた懐かしい家が、管理する人もなく朽ち果てるのが嫌だった。
それで俺が貰った。
「倉本、お前、会社の金を使い込んだな」
部長に呼び出されてそう言われたが、なんのことだか分からない。
もちろん使い込みなどしてない。
「そんなことやってない」
「課長の
「とにかくやってない」
「刑事告訴も視野にいれるが良いのか?」
「やってないんだ」
「とりあえず、懲戒解雇だ。そのうち警察が行くだろう」
「そんな。信じてくれ」
「往生際の悪い奴だな」
なんてこった。
何となく犯人が分かった。
課長の
そうに違いない。
たしかに俺の印鑑の管理が甘かったことは認めよう。
だが、書類に押すから印鑑を貸してくれと上司に言われたら、貸さない奴はいないだろう。
はあ、俺は前科者になってしまうのかな。
弁護士に相談したら無罪になるのかな。
机の荷物を片付け終わった時に、スマホが着信音を奏でた。
恋人の
「悪い、ちょっといま立て込んでいる」
「大事な話なのよ。会えない?」
「少しぐらいなら」
駅前の喫茶店で
「結論から言うけど、私達別れましょう」
「もしかして、警察が行ったのか?」
「違うわ。私、結婚するの。お腹には彼の子供もいるわ」
セックスレスだったけど、そうか俺は貢ぐ君のひとりだったわけだ。
くそっ、悲しみより怒りだ。
「騙したのか」
「良い夢を見れたでしょう。私みたいな美人とあなたが釣り合うわけないじゃない。私がデートに付き合って、あなたは見せびらかしたのだから、いい気分になれたでしょう」
「そんなこと思ったことはない」
「へぇ、でも周りはそう思っていなかったでしょうし。あなたもまんざらではないって顔をしてたわ」
「お前なんか呪われろ」
「そんなことを言うのね。金輪際、私の前に現れないでね。現れたら彼に頼んで、痛い目にあってもらうわ。彼は大社長でお金持ちだから」
こんな酷い女だと思わなかった。
もう良い。
「忙しい。話がそれだけなら俺は行く」
喫茶店から出ると、滴り落ちる涙を感じた。
何なんだろう。
悲しさか悔しさか。
分からないけど、心がぐちゃぐちゃだ。
そして、またもやスマホから着信音。
知らない番号だ。
普段なら出ないが、俺は出た。
「いつもお世話になっています。宅利銀行の斉木と申します」
「はい」
「友人の
「はい」
「
えっと、となると
前科者で、自己破産確実か。
「居場所は知らない」
「そうですか。連絡があったら報せて下さい」
くそっ、不幸だ。
俺が甘かったというほかないが。
いくらなんでもこれは酷過ぎだろう。
呪われているとしか思えない。
とりあえず弁護士に電話してアポを取った。
「とにかく横領などしてない」
事情を全て話した。
「落ち着いて下さい」
「落ち着いていられるか!」
「印鑑の話は分かりました。その線で無罪を主張するのですね。裁判になると思います。民事と刑事でね。うちは刑事事件なので、民事の方は事務所を紹介します。それと自己破産手続きですね。これも別の事務所になると思われます。ただ借金というのは返済期日が決まっているので、猶予はあると思いますよ。ただ利子の支払いが滞っているとなると時間の問題ですね」
ああ、もう。
保証人になった借金の相手が銀行で良かった。
闇金とかだと大変だ。
不幸中の幸いだ。
とにかく、アパートを引き払って、相続したおばあちゃんの家に引っ越そう。
金がこれからいるのでレンタカーで軽トラを借りて、引っ越しをやった。
郵便局に届け出を出したので、一年間ぐらい郵便物が届く。
本当は俺も失踪したかったが、親には迷惑を掛けられない。
当然、出ない。
郵便物が郵便受けにこれでもか詰め込まれてた。
部屋のドアには借金返せの張り紙が。
こんなことをするのは闇金だな。
事業始める前に止めておけば良かったか。
「隣の人、夜逃げしたんだって。柄の悪い男達が来て怖かったわ」
隣の住人が俺に声を掛けてきた。
「今、どこにいるか知らないか?」
「知らないわ。ねぇ、あんたもお金を貸してたの」
「似たようなものだ」
「ひょっとしてお金持ち?」
「いや」
「だよね。服装とかからみて一般人だわ」
「どうも」
余計なお世話だ。
どいつもこいつも。
かなり人間不信になっているな。
会う人間全てが詐欺師に思える。
弁護士さんですら詐欺師じゃないかと疑っている。
これからどうなるか分からないが、おばあちゃんの家で一日ゆっくりしよう。
そして、また精力的に行動するんだ。
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