第8話


 最初は、興味本位だったんだ。


 エイザと日本に行こうって言った時、最初に浮かんだのは、母親の故郷だった。


 名前くらいは知ってた。


 中には遺伝子提供を匿名で行う人がいて、自分の親の名前すら、わからない子達がいた。


 ただ、私は運が良く母親の情報が残っていた。


 日本では著名な人だった。


 女子テニス界のホープで、史上最年少のグランドスラム。


 「天才」だった。


 世間からの評価は。



 もう一度、テニスがしたい



 とあるネット記事で、そう書いていた。


 私の母親は「緋村涼(ひむらすず)」という名前だった。


 美人だった。


 最初に見た時、そう思った。


 少年のような瞳をしてて、それでいてどこか、大人びてて。


 後ろ向きに被った帽子に、日焼けした肌。


 アシックスのテニスウェアを着て、広いテニスコートの芝生の上で。


 何一つ着飾っていないありのままの姿は、女性とは思えないくらい逞しかった。


 かっこよかった。


 あぐらをかいてるその姿も。


 ラケットを持つ何気ない仕草も。



 彼女は遺伝性の筋疾患を患っていた。


 ドナー提供する人たちの大半は、遺伝性の病気を抱えてる人たちだった。


 私たちはその“副産物”だった。


 私たちの生みの親である「国際遺伝学研究所 ジュノン」は、遺伝性疾患を抱えている人たちの治療法を研究するため、立ち上げられた機関だった。


 遺伝子研究を重ねる中でタンパク質コード領域やその他のゲノム領域が発見され、「ゲノムプロジェクト」と呼ばれる新たな分野が確立された。


 遺伝子工学の新たなステージだ。

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