パラレルスフィア
長尾 景一
第0話 プロローグ 変わってしまったセカイ
その日はなんてことのない日曜のお昼のはずだった。
突然、どこからともなく現れた巨大ロボットと真っ赤なドラゴンを見るまでは――。
現代日本におおよそ存在しないであろう二つの異物。
レッドドラゴンの咆哮を聞いて、もしかしてと思って高所にある中野坂上駅付近まで見にきて正解だった。なんだよ、これ。ありえねえだろッ。
名前の通り坂の上にある駅の近くからは街の様子が手に取るようにわかる。
ビルとビルの間を縫うように進んでいく足の長い四脚の巨大ロボット。
灰色の球体のボディに中央には巨大な緑色のレンズに覆われたメインカメラがついていて、あちこちを見回していた。四つのライトが前面の角にそれぞれ一つずつついており、辺りを照らしている。頭に三本の角のようなものが備えられており、四脚で歩いていく。
ロボットの下部には縦横無尽に動く砲台が備え付けられていて、全長5m程のソレからはピンクに輝く光熱線が放たれ、街にある鉄柱や路駐されていたトラックなどの移動する時の障害になりそうなものを熱で溶けるバターのようにどんどん溶かしていった。
というか、なんであの時のコスモロイドがこの世界に現れているんだ……?
この世界には存在しないはずなのに……。
問題は巨大ロボットだけじゃない、上にもヤバいのがいる。
空にはまるでファンタジーの世界に出てきそうな緑の鱗に覆われたドラゴンが悠々と飛んでは地上に向けて猛火を吐き出していく。
街の家屋のいくつかは炎に包まれていき、それが隣の家屋にまで延焼してさらに被害が広がっていった。黒煙がもうもうと上がり、火があらゆるものを包んでは灰へと化していく。
アイツもあのファンタジーの世界にいた時のやつだよな。なんでこの世界にいるんだ!?
地上で暴れる巨大ロボットと空を飛んでは火を吐くドラゴンを見て、逃げる人々が後をたたない。老若男女問わず、この街から一目散に走って逃げていった。
あまりの渋滞から、車を置いて車道から逃げ出す人で溢れていた。歩道の方じゃ、みんなが少しでも離れようと押しあってそこらで罵声が聞こえる。
ホンモノの地獄がここにはあった。
しかも、あいつらよく見たら、新宿の方まで向かっていってやがる。
冗談じゃねえよ。こんなヤバい光熱線を放つ巨大ロボット火を吹くドラゴンが新宿までいったら、おびただしい程の死者が出るに決まっている。
ただでさえ、とんでもないことになってんのに。
そうだ! 自衛隊は? この危機に対処してくれるんじゃ。
というか、この件について報道されているのか?
スマホでSNSを開いてみるとどうやら世界中でドラゴンやコスモロイドが暴れ回っているらしい。自衛隊と在日米軍がその対処に覆われていた。
というか、日本だけじゃなくて世界中が大変なことになっていた。
アメリカ、中国、ヨーロッパ、中東、アフリカ、南米、ロシア。
空に現れた黒い穴からドラゴンやコスモロイドが降ってきては暴れて回っている。
なんなんだよ、この世界。いったい、なにがどうなってるんだよ……?
一番始めの何もない平穏な現実世界に戻ったと思っていたのにッ!
冗談なら……冗談なら誰か冗談だと言ってくれッ!
俺はおそらく元凶になったと思われる球体に目を向ける。
黄金色の球体が手の平の上で陽の光に当たってキラリと輝く。
もしかして全部、全部こいつのせいでおかしくなっちまったのか?
考えられる要因は今のところこれだけだけど……。
そもそも、なんでこんなことになったんだっけ?
混乱する頭の中を必死に動かしながら、俺は事の発端たる週の初めの月曜日を振り返る。
そう全てはあの日を境に始まってしまったのだから――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます