14:惑星レビュー

『銀河惑星環境レビュー vol.4649』特集:図書惑星(通称:ビブリオス)


評価者:

- デジタル惑星代表 サイバー・テキスト

- 石版惑星学者 タブレット・ストーン

- テレパシー星系放浪者 マインド・リーダー


[全体評価:★★★★★(4.8/5.0)]


「本を読む」という表現が、ここでは文字通り「生命体を理解する」という意味になっているという事実に、私は最初かなりの衝撃を受けた。(サイバー・テキスト)


【生態系概要】

図書惑星の生命体は、全て「本」として進化した。彼らは文字通り「装丁」を皮膚とし、「ページ」を内臓として持つ生命体だ。大きさは様々で、携帯に便利なサイズから、建物ほどの大きさまである。


特筆すべきは彼らの繁殖方法で、「増刷」と呼ばれる。ただし、一字一句同じコピーではなく、微妙な誤植や解釈の違いが「個体差」となる。これが進化の原動力となっている。(タブレット・ストーン)


【社会構造】

最も興味深いのは、彼らの階級社会だ。


頂点に立つのは「百科事典種」。彼らは巨大で移動は遅いが、あらゆる情報を持っている。ただし、情報が更新されないことへの焦りから、若い世代を積極的に取り込もうとする傾向がある。


中間層は実用書や小説が占める。特に「自己啓発書種」は強力な繁殖力を持ち、時として生態系を乱すことがある。なお、「出版社」は我々で言う国家に相当する。


下層には「立ち読み種」と呼ばれる遊牧民のような存在もいる。彼らは定住せず、常に移動しながら生きている。(マインド・リーダー)


【驚くべき生存戦略】

「読まれる」ことは彼らにとって栄養を得ることに相当する。しかし、完全に読破されると、その個体は「消化」されてしまう危険がある。そのため、彼らは様々な生存戦略を編み出した:


1. 「積読迷彩」

本棚の中で他の本に紛れ、読破を回避する技術。特に専門書種に多く見られる。


2. 「引用の輪」

複数の個体が相互に引用し合うことで、「必読」のステータスを獲得する。古典文学種の得意技。


3. 「難解化」

意図的に理解を困難にすることで、読破を防ぐ戦略。哲学書種の主流派。


「実は、彼らの間で『読んでいない本について堂々と語る方法』は最重要の生存技術なんです。読まれずに影響力を持つことが、最も安全な生き方なんですよ」(サイバー・テキスト)


【観光スポット】

- 大図書館山脈(★★★★★)

野生の書籍たちが自然な状態で生息している。ただし、「積読崩し」には注意。


- 古本生息地(★★★★☆)

使い古された個体たちが平和に暮らす保護区。しおりの跡が個体の勲章として扱われる。


- 電子書籍化防衛線(★★★★☆)

デジタル化の波から身を守るため、物理書籍たちが結束して作った防衛ライン。


【注意事項】

- 「この本つまらない」は重大な侮辱

- 付箋を貼ることは親愛の証

- コーヒーの染みは重度の傷害と見なされる

- 書き込みは事前に許可が必要


【最新の危機】

最近、「全く読まれない」という新種の飢饉が発生している。特に若い世代で深刻だ。


また、「デジタル化ウイルス」の脅威も無視できない。感染すると物理的な形態を失い、データ化してしまうという。(タブレット・ストーン)


【総評】

「本という生命体」という概念は一見奇妙だが、私たちの知識や文化の伝播を考えると、実は理にかなっているのかもしれない。


ただ、私が密かに心配なのは「積読」という現象だ。彼らにとっては生存戦略の一つなのだが、あまりに多くの個体が積読状態になると、社会全体が機能停止するのでは?(マインド・リーダー)


追伸:

この報告書自体も図書惑星の生命体です。レビュー終了後は適度な積読をお願いします。完読は私の寿命を縮めます。(報告書より)

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