第21話 図書館の目覚め



その振動は、建物全体から発せられているようだった。


しかし、恐れるべきものではないと、私たち全員が直感的に理解していた。


「図書館が...」リリアが息を呑む。「意識を持ち始めている?」


「違う」図書館長は穏やかに首を振った。「図書館は常に意識を持っていた。ただ、今まではその声を、私たちに届けることができなかっただけ」


その言葉と共に、空間に新たな変化が起きる。


書架と書架の間に、光の通路が形成され始めた。それは星図のように美しく、かつ精緻な構造を持っている。


「分かります」私は台帳を見つめながら言った。「これは...ナビゲーションシステム」


「え?」リリアが首を傾げる。


「本を探す人を、最適な知識へと導くための」


ヴァイスが静かに頷く。「バルトス機関が求めていたのも、まさにそれでした」


「しかし」アーサーが一歩前に出る。「これほどまでの変化を、世界は受け入れるのでしょうか」


その問いに、意外な人物が答えた。


「受け入れさせるのです」


振り返ると、そこにはミラ。その姿は、かつてないほど凛々しく見えた。


「私たちが...導いていく」


その瞬間、彼女の周りに古代文字が浮かび上がる。そして、現代の文字と交わり始めた。


「私も」リリアが前に出る。「学院で、この新しい知識の在り方を教えていきます」


「バルトス機関も」ヴァイスが黒衣を完全に脱ぎ捨てる。「その役割を変えるときですね」


アーサーも、ゆっくりと剣を納めながら頷いた。


「見守る者から、導く者へ」


突如、私の手の中の台帳が大きく共鳴する。


そこに現れた文字は、もはや古代のものでも現代のものでもない。


まったく新しい、しかし懐かしさを感じさせる文字。


『共に歩む者たちよ――道は開かれん』


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