ネタ・アソート
ある日の居酒屋で、魔族たちが人間社会に上手く溶け込みながら雑談を楽しんでいた。雰囲気は和やかで、怪人たちがそれぞれの悩みや日常の出来事を語り合っている。
その中で、ひとりのサメタイプの魔族がため息をつきながら呟いた。
「俺、免許の更新で一回、四国まで帰らなきゃ……」
偶然、その話を後ろの席で聞いていたエリシアが、興味を引かれたようにいきなり振り返る。
「泳いでですの!?」
サメタイプの魔族は、一瞬驚き、慌てて答えた。
「いや、高速バスですけど……」
「あっそ。」
エリシアはそれ以上興味を持たず、すぐに話題を切り捨てるように答え、再び目の前の料理に集中し始めた。
彼女は何事もなかったかのように、静かに料理を食べ続ける。
サメタイプの魔族は、少し戸惑いながらも話を続けようとしたが、エリシアの態度に深追いすることを諦めた。
居酒屋での雑談は続き、今度はリザードマンが興奮気味に話し始めた。
「この間さ、近所に最近できた蒙古タンメンの店あるじゃん?あそこ、めっちゃ辛かった!辛すぎてさ——」
その瞬間、エリシアが再びいきなり振り向いた。彼女の目が輝いている。
「火吹いたんですの!?」
その問いにリザードマンは少し戸惑いながら、冷静に答えた。
「いや……別に火は吹かないけど……」
エリシアの目の輝きが一瞬で消え、無関心な表情に戻った。
「あっそ……」
彼女は再び興味を失い、目の前の料理に視線を戻して、何事もなかったかのように食べ始めた。
リザードマンは困惑した様子で、話の続きをどうするか迷ったが、そのまま話を終わらせることにした。
********************
悪の組織川越支部にて、エリシアはボスから買い物を任されていた。彼女は優雅な足取りで支部に戻り、声を張り上げた。
「買ってきましたわよぉ〜!」
ボスは台所で袋から取り出した商品を確認すると、眉をひそめた。
「ちょっと!エリシアさん!」
ボスは声を上げてパンを見つめた。
「うちで食パンって言ったら、6枚スライスでしょ!?」
エリシアが買ってきたのは、なんと5枚スライスのパンだった。
ボスはため息をつきながら、エリシアを軽く睨む。エリシアは肩をすくめ、少し不満そうに口を尖らせた。
また別の日、エリシアは再び買い物を任され、意気揚々と支部に戻ってきた。
「買ってきましたわッ!」
ボスは台所で袋を開け、次々と生活用品を取り出していく。しかし、ふと手が止まり、眉をしかめた。
「ちょっと!エリシアさん!」
彼は驚きながら、エリシアを見つめる。
「うちでティッシュって言ったら、お得用の5箱セットでしょ!?」
エリシアが買ってきたのは――鼻セレブ。高級なティッシュだった。ボスは困惑し、頭を抱える。
******************
冬コミ帰りの二人組が、ふと道端に見つけた看板を見上げた。
「お、あんなところにメイド喫茶あるじゃん!」
「よし、じゃあそこで戦利品を見ようぜ〜!」
気軽な気持ちで入った二人。しかし、扉を開けた瞬間、その店の異様な雰囲気に気づく。
店内は普通のメイド喫茶とは全く違っていた。
椅子と机がたった一つしかなく、壁はガランとしている。
そして、その唯一の机の上に、店長らしき人物――エリシアがデンッと踏ん反り返って座っていた。
彼女はまるで王者のような態度で二人を睨みつけていた。
手元には一杯の紅茶があり、彼女はゆっくりとそれを口に運びながら、冷ややかな視線を二人に向けた。
「いらっしゃいませ、私のメイド喫茶へようこそですわ。」
その声は優雅だったが、彼女が圧倒的な権力を握っていることを物語っていた。
二人は少し戸惑いながら、エリシアに声をかけた。
「あの……2人なんですけど、席は?」
彼らは店内を見渡すが、唯一のテーブルにはエリシアが踏ん反り返って座っているため、当然席がない。
その瞬間、エリシアの目がクワッと見開かれ、二人を鋭く睨みつけた。
「メイドはお前たちですわ!!」
次の瞬間、メイド服が彼らの顔面に勢いよく投げつけられた。
——ビシャ!
呆然とする二人に、エリシアは容赦なく命令を下す。
「さあ、早くスコーンを焼きなさい!それとも、お茶も淹れられない無能ですの!?」
彼女の冷酷な声に、二人は驚きと混乱の中、メイド服を手に取りながら、お互いを見つめ合った。
どうやら、この店では客がメイドになるという恐ろしいルールがあるらしかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます